そして彼女は皇帝となる
第十九話 なんかもう、色々酷い真相。
……き……さい、……きなさい。
『起きなさい、そこな男子よ』
なにか、とても良い声が耳元で囁かれる。
モヤがかかった頭を何とか動かして目を開けると、落書きみたいな顔が飛び込んできた。
「うわぁ!?」
思わず飛び退こうとしたが、身体はちょっとしか動かなかった。寝てたし。
覗き込む、落書きのような顔。
「ななな、」
『oh......男子よ、毒殺されるとは情けない』
「なんでここに居るんだよ
ようやく身体を起こして辺りを見渡せば、そこは金色に輝く場所で、僕はどこにいるのかわからなかった。
『ここはあの世とこの世のborder……あなたは今、生と死のHAZAMAにいるのです……』
「なんかムカつくなその喋り方」
いい声なのがさらにムカつく。
「っていうか、そこになんでお前がいるんだよ」
『それはともかく。男子よ、あなたは自分が何故こうなったか理解しておりますか』
「それは……」
記憶にあるのは、藍大将軍と話した後のことまで。
それで死にかけているということは、正月の
「僕は、まだ生きているのか?」
『ギリギリなところですな。ですが安心なさい。私があなたを、現世へ送り出してあげましょう』
「ほ、本当か!?」
いや、なんでこいつがそんなこと出来るんだよ、というごく普通の疑問は出てこなった。そもそも喋れることに疑問を持っておけと、後の僕は思った。
『ではいきますぞ。そおおおおおい!!』
「え、ちょ、」
GOOD LUCK、という声が、どこかで聞こえた。
「投げ飛ばしかよ!?」
叫んだ瞬間、目の前が色のある世界へ変わっていた。
よく見た天井の色に、硬い
目の前には、なぜか
お、と
「起きたのかよ~!! 生きててよかった~!!」
目いっぱい僕の身体を抱きしめた。
もう一回死ぬかと思った。
■
「目が覚めて、本当に良かったです。
僕の家には、
ひ、酷い夢だった……けれど、一体なんでここにいるのか。
「あの時、兄さんはフグの毒を飲まされていたんです。椒酒に入れられていたのでしょう。それに私が気づいたのは、毒味役が倒れた時でした」
「
「ええ。おまけに、あの時は無礼講の席。誰が何をしてもおかしくありません。慎重に毒味役は選んだのですが……」
「毒味役がすぐ倒れないように、遅効性の毒を使ったんだな」
おまけに、椒酒の回転率は早い。誰が、いつ注いでくれるかもわからない。
「なので、私も実は、兄さんに毒を仕込んでいたのです」
「……は?」
こいつ、なんて言った?
「実は毒には様々な成分があり、真逆の毒の成分を同時にとると、相殺されるという性質があります。
この場合フグの毒は、
「つまり
薬と毒は紙一重だとは知っていたが、そんなことが起きるとは知らなかった。
ただ、と
「フグの毒をどれぐらい飲まされたのか、よくわからなくて」
「……ん?」
「しかもフグ毒より
「んんん?」
「倒れた時は、慌ててフグ毒ぶっ込ませたんですけどね!」
「じゃあ倒れたのお前のせいじゃん!!」
思わず大声で突っ込んでしまった。僕、病み上がりなのに。
「ちょっと待ってください。あのままでは、
「や、そ、それもそうか……」
「まあとりあえずこのまま死んだことにした方がいいかなって、仮死状態にする程度には殺しましたけど」
「じゃあやっぱりお前のせいじゃん!!」
酷い。これが僕の従妹か。
「待てよ。僕、死んだことになってるってことは」
「ええ。葬式も行われましたよ」
「……
「知らせてませんよ。知っている人間は極わずかな方がいいかなって」
「…………なんで
「そりゃ勿論」
答えるまでもないだろう、みたいな口振りで、
「彼に頼んで、
「犯罪行為じゃねぇ――か!! この教唆犯!!」
もうやだこの従妹。
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