第十四話 うちの子すくすく育ってます。
后庭に行くと、
「あ、ぱぱ!」
だか、伸びてくる手は、まだまだ小さい。
「
「だいじょぶ! どなるどとあそんでた!」
「実質一人だろ、それ」
いや、確かに安全そうではあるけど。闘鶏でも負け無しだから強いだろうし、コイツ。
だが、
「あのねー、ていうかねー、どなるど、しゃべるんだよー」
「ははは、そうかー」
……奴なら有り得かねん。
市中の人々もだけど、後宮の人たちもこの生き物に疑問に思ってない。何らかの認識阻害でも受けているんだろうか?
「あのねー、ていうかねー、だっこしてー」
「はいはい」
暫くそうやって喋ったり抱っこしたりしていると、李太皇太后がやって来た。
「おや、そこにおったか、崔どの。
十五歳になった李太皇太后は、今ではすっかり少女らしい顔つきになっている。
「じぇじぇ! ていうか、みんなであそぼー!」
「お前のお父様は、今からご用事があるのだ。しばし、私と一緒に遊ぼうな」
李太皇太后の言葉に、きょとんとした顔をする
「……やだ!」
と、力強く抵抗するのだった。
■
「いやだー! みんなであそぶのー!!」と金切り声で抵抗するわが子をなんとか振り切り、僕は藍大将軍のもとへ向かう。「うらぎりものぉぉぉ!」と幼児らしからぬことを叫ぶわが子と、「行け! ここは私が食い止める! 私の屍を超えていけ!!」 と、太皇太后らしからぬ台詞を放った二人が頭の中に浮かぶ。すまんわが子よ、そして李太皇太后。
背景さえ無視すればまるで二年前の再現だが、藍大将軍の身体はこの二年で随分老いたように思う。
「李太皇太后からお話を伺いました。いかがされましたか?」
いくら孫だからって、使い走りのように李太皇太后を伝言係に使うだろうか。
僕が立たずを飲みつつ待っていると、最近、と藍大将軍が切り出した。
「……陛下に、何か身体の異変はございませんでしたかな?」
「
強いて言うなら、過労で精神が困憊しているが。体調的には至って健康だ。
「
「……そうですか」
なんで僕に聞くんだろう。官医に聞けばいいのに。
「いえ、ご健勝であられるならよいのです。ところで、陛下は今年で二十歳でしたな」
「あ、はい」
「本題の話というのは、実は――」
藍大将軍の『本題』に、思わず叫びそうになった。
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