第30話 遠距離攻撃の訓練開始弓と銃と砲と

 さて、万里小路藤房と北畠具行はしばらく赤坂村に逗留していった後、京の都へ帰っていった。


 俺は農業に従事しなくても済む次男、次女以降の者や離散農民、河原者などから志望者を募りその中で手先の器用な者を選び抜いて船に載せると壱岐へ渡った。


 その者たちの中でまず弓の心得が在るものは弓の腕を磨かせる、そのほうが無駄はないからな。


 弓の心得はないが男の中で扱う獲物を弓を希望するものは弓を、弓を希望しないものや女は火縄銃の扱いを訓練させた。


 熟達した弓の使い手は強い、しかし、強弓を引くことができるようになるためには全身の筋力が必要だ。


 俺は弓兵になる予定の者たちに告げた。


「これより弓をひく練習を毎日きちんとやってもらう。

 下半身の安定も重要なので走りこみもかかさず行うように」


「わかりました」


 弓の腕を鍛えるものは最初は素引き、つまり矢をつがえず弓を引いて矢を射る際の実際の動作を覚えさせつつ、弓を射るときに使う筋肉を鍛えさせる。


 弓を使う時に使う筋肉というのはかなり特殊だからな。


 毎日やって腱を痛めてもまずいので、暫くの間は一日置きに弓引きを行わせた。


 それをやらないときは走りこみだ。


 素引きを繰り返しても筋肉痛が起きなくなる程度に体が整ったら、矢をつがえての巻藁へ向かっての投射訓練をへて的への訓練に移行する。


 そして的への命中率が9割を超えたら順次弓を強いものに変えていくことになる。


 最初は雀小弓からはじめ、満足に引けるようになれば小弓、半弓、一人張りの大弓とだんだん強くし、一人張りの弓がが引けるようになったら二人張り、三人張りと強くしていく。


 最低限この程度が引けるようになれば実戦や狩りでも十分役に立つようになるはずだ。


 一方火縄銃の方だが、弾の込め方、銃の構え方、撃ち方、うち終わった後の掃除の仕方などを教える。


 その中でも腕の良いものには狭間筒と呼ばれる全長の長いものをもたせ狙撃手として育てる。


 最初は1匁筒(口径8.7mm)から練習を開始する。


 実践では1匁筒では足軽の纏う鎧すら貫通できない可能性が高いから実践では使えない。


 その代わりウサギなどの小動物を撃つのには使えるから練習が終わったら狩猟用に使うとしよう。


 一口に火縄銃といっても口径や銃身長は様々だが基本は二匁筒だ。


 これは口径で11ミリ、弾丸径で10.7ミリ程度のものでこれでも鎧をまとった人間を打ち倒すに十分な威力があるが、さほど力のない女でも使うことができるという便利なものだ。


 力のあるものには十匁筒をもたせるこれは口径18mmくらいで熊や馬、大鎧を来た武士でも一撃で倒せる威力を持つ。


 ただし反動も半端でないので力のないものには使えないのと火薬を多量に消費するのが欠点だ。


 一緒に船に載せた大砲を用いて標的船を使って波に揺られた状態でも艦砲を打てるような訓練も行う。


 砲艦として特別に建造したした大型船……と言っても西洋でのキャラッククラスだが、の左右の甲板に12門ずつ、艦首に一門、船尾に二門のカルバリン砲タイプの口径は小さめだが砲身が長く射程が長い青銅製鋳造砲を搭載している。


  玉の重さはおおよそ2貫(約8kg)射程は最大で一里半(約6000メートル)これだけの射程があれば海岸沿いにある鎌倉の屋敷を砲撃することも可能だろう。


 大砲は河内の鋳造職人を壱岐に移住させて作らせた。


 古来より寺社の鐘や仏像などを鋳造で作っていた職人たちの腕は確かで問題らしい問題は特に無い。


 これ等の銃の原材料である鉄は主に大陸で製鉄されたものを延べ棒として輸入している。


 残念ながら銑鉄の技術ではこの時代では中国は遥かに上なのが実情だ。


 火薬の材料である硝石はインドから、弾丸のもとである鉛は東南アジアから主に輸入していた。


 日本は金銀銅水銀と言った貴金属が豊富な割に鉄や鉛などの金属が少ないのが悩みどころだ。


 なので砲にかんしては大和や河内でも割りと算出する銅を用いて砲金で作ることにした。


 大型艦砲を作るには砲金が一番無難だからな。


 輸入に頼るということは逆に言えばこういった武器が鹵獲されても有効に活用することが難しいということでも在る。


 戦国時代の織田信長が鉄砲を大量に生産して活用できたのは堺の港を抑えていて、南蛮人の交易により鉄や鉛、火薬などを優先的に入手できたところが大きい。


 南蛮人は腐敗した仏教を嫌う織田信長を利用して日本を宗教と鉄砲を用いて侵略しようとして結果としては失敗したがな。


 それはともかく壱岐で俺が鍛えた兵は合計で弓兵が1000に銃兵が1000、砲兵が1000というところか。


 とはいっても普段は漁師や漁師、俺の手足として交易に従事するものとして働いているものがほとんどだから専任兵士というわけではないが。


「まあ、これだけの兵がいれば高麗水軍と正面切って戦っても勝てるかもな。

 今のところこっちから仕掛けるつもりはないが」


 もうすぐ日本最大規模の内戦が始まるはずのところで、高麗に介入されるのは都合が良くないしな。

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