延慶3年(1310年)
第12話 左兵衛少志兼河内大目被官と大陸での銃器・大砲・火薬の入手
年が明けて延慶3年(1310年)になった。
俺は去年の交易で増やした宋銭や買った綿、砂糖、胡椒、領地で取れた干し椎茸、冬虫夏草、霊芝、水銀などを鎌倉と朝廷に献上した。
鎌倉は元々俺達楠木は有力御内人である
寺というのは皇室や貴族が出家して余生を過ごす場所でもあったからな。
これが都の貴族に伝わり、下級貴族の中には俺に妹や娘を嫁に取らせようと考えているものも出てきたようだ。
平安時代末期から武家に荘園を掠め取られてきて困窮した公家だが、承久の乱以降は困窮の度合いはかなりのものとなっていた、橘氏は奈良時代の敏達天皇系皇親である美努王に嫁いだ
また、この時代の任官には源平藤橘のいずれかでなければなければ駄目だったからまあその血をひいていたのは、ありがたいことだな。
まあ、藤原氏や源氏、平氏でも末端は困窮して豪族になってる連中が多いわけだから、そうだとしても権力的にはあまり意味はないが。
「やれやれ貴族にたかられても困るんだがな……」
其の様子を元服して
「なんでだ、貴族の嫁がいれば自慢できるんじゃないのか?」
俺は肩をすくめてみせた。
「商いも農作も家事もできない女を嫁にもらって、其の貴族を養う必然性がどこにある」
「ああ、まあそりゃそうかもな。
そんな嫁は俺でもごめん被る」
それはともかく結果として俺の養父の楠木正玄は左兵衛大尉兼河内大掾に、俺は左兵衛少志兼河内大目の官位を得ることができ、正式な交易許可証および海賊の討伐許可を得ることができた。
大雑把に言えは兵衛大尉は警察なら警部、軍隊なら尉官、兵衛少志は警察なら警部補、軍隊なら伍長ぐらいかな。
この上の兵衛佐と言うのは軍隊でいえば佐官相当で平清盛や源頼朝などが被官したくらいだから俺たち御内人では普通に考えれば無理だろう。
因みに大掾と言うのは県庁の部長、大目というのは県庁の係長みたいなものだと思ってもらえばいいだろう。
実際には承久の乱で上皇側についた公家や武士も含めて荘園をまとめて取り上げられた朝廷の官位には実行的な支配力はまったくなく、河内守護は北条が名目上行なっていたが、実際は俺達楠木が代行していたからそれを名目として表したものだと思っていい。
俺達は河内の地頭職として、警察及び裁判の責任者としての治安維持と徴税とその献上はもちろんちゃんと行なった上での財貨の献上だから文句はなかったようだ。
まあ、その御蔭で出仕して実務に励まないといけないということはないわけだが。
「これで、大手を振って海賊どもを討伐できるな」
俺がニヤニヤしてると
「どうせ今までと変わらんだろ」
俺は真顔に戻って答えた。
「ああ、実際は今までと変わらん。
だが官位や許可証を得たことで正当性をえたのは大きいぞ。
これでいちゃもんを付けられる可能性は大きく減った。
大義名分というのは重要だぞ」
神宮寺はよくわかっていないようだが書状の許可証や名目上の官位があるのと無いのとではだいぶ違う。
日本はそういった文章記録や肩書というのはとても有効な国だからな。
さて、俺は去年と同じように水銀や干し椎茸、冬虫夏草、霊芝、木材、硫黄、珊瑚などを日本で仕入れ、東南アジアやインドで宝石や香辛料、香料、硝石と引き換え、それを中国で売り、朝鮮半島南部の軍の警備の手薄なところを襲って、元寇の際に連れされらた日本人を取り返したりしていた。
この頃元では1307年にフビライの後を継いだテムルの死後、皇后ブルガンがテムルの兄ダルマバラの夫人ダギのクーデターにより処刑され、息子のカイシャンをハーン位に据えた。
そして1320年にはオゴタイ=ハン国が滅んでる。
まだちょっと早いが朱元璋が現れて元を滅ぼすのはこの時代だ。
そんな状況に加え凶作やペストの流行なども有って中国大陸は現在混乱している。
そんな状態では武器を横流しするものも出てくるわけだ、俺はそれにより原始的な青銅製の銃身を持つ銃や大砲を手に入れることができた。
その他槍や弩なども購入した。
最もこの時代の銃の点火方法はタッチホール式と呼ばれるもので、熱した鉄の棒を火種として、それを直接銃身の点火口に押し付けるものだ。
勿論これでは狙い撃ちなどはできないから、せめて火縄銃に改良しないといけないだろう。
勿論、銃や大砲だけ有っても意味が無いのであるので、黒色火薬も一緒に買い、火薬の製造法も密かに教わった。
問題は銃や大砲の射撃練習をどこで行うかだが……。
とりあえず日本から離れた海上で行うべきだろうな。
先ずは火縄銃に改良をするために壱岐に持ち帰ろう。
黒色火薬を作るのに必要な硝石はインドで安く手に入るから問題ない。
木炭と硫黄は日本であればもっと簡単に手に入る。
問題は銃器や大砲の信頼性と重量だな。
まあ、先ずは海戦で使ってみるとしよう。
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