第3話 今後の方針

 さて、後醍醐天皇が倒幕の計画を立てる、正中の変は元亨4年正中元年の1324年だ。


 今は嘉元3年(1305年)らしいからまだまだ先ということだな。


「まあ、普通ならこういう場合喜々としてまず内政改革に取り組むんだろうけどな……」


 俺は学生の時本を読むのが好きだった。


 仮想戦記ものと呼ばれるものは結構読んでたし、ネット小説も読んでいた。


 そういった話では未来から来た存在は未来知識を用いて農業や武器などの技術を改良して自分を有利な立場に持っていく場合が多い


 しかし、今はまだ鎌倉幕府はちゃんと機能している、だが幕府の財政は危機的で難癖つけられて攻め滅ぼされたり土地を移動させられた御家人も少なくない。


 元は駿河にいたのに田畑に向かないこの場所に移動させられた俺達の家がまさにそれだ。


 それにこの時代畿内や西国では米の裏作として麦を栽培する二毛作や、刈敷・草木灰・下肥などの肥料の使用、牛馬に犂を引かせる耕作、水車を用いた田への揚水などは既に行われていたし、楮や荏胡麻、染料としての藍や養蚕のための桑、薬としての茶の栽培などははじまってる。


 しかしまだ東国にこれらの農法などは伝わっていない。


 そういう訳で畿内などの土地は幕府と貧乏御家人には喉から手が出るほどほしい土地だから、余り目立つようなことはできない。


 いつ何時難癖をつけられて、また転地させられるかわらないからな。


「とりあえず、今まで通り水銀を売って金を稼ぐのは変わらないとして、

 農地に頼らずにある程度金を稼ぐとすると、

 他にこのあたりで金になりそうなのは……木材、椎茸栽培、真珠の養殖

 ってとこか、出来れば木綿の栽培には手を付けたいがな……」


 農地はともかく、商いに関して東国武士は無知だし、そういった行為に携わることを嫌っている。


 だからそういった方面で儲けを出すのはさほど目をつけられにくいだろう。


「いや、今は国内より高麗や元の動きに注意しておいたほうがいいかもな。

 どうも高麗はまだ日本に侵攻することを諦めてないようだし」


 まあ、元寇のときの元の皇帝フビライ・ハーンは1294年に病没してるんで、元自体は今は内乱中だが、高麗は壱岐や対馬を攻撃する気満々だからな。


「だとすれば中国のジャンク船をなんとかして手に入れたいな。

 和船じゃ海賊は厳しいだろうし」


 荷物を運ぶのには和船は喫水が浅く底が平たいから、川で用いたり砂浜に引き上げたりするのは簡単だが、筵を帆に使ってるから雨が降って重くなった時に横風や横波であっさりひっくり返ったりする。


 それに風上側へに航行することも難しい。


 まあ、実際には遣明船と呼ばれる箱型の船を使って倭寇は活動してるけどな。


「まあ、その前に先ずは体を鍛えて更には自分で船を操れるように人を集めたりするのが先か」


 船の知識を手に入れる必要もあるな。


 こいつは結構忙しくなりそうだ。

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