39.星なる復活と滅亡⓪(後編)
「『四つの国宝が揃えば、過剰に増えすぎた闇を消し去る。』
実際、四つの国宝が合わさり邪悪の魔王を打ち倒すところを、私は目撃しました。
...というか、フラストノワール、セセルカグラ、ウィンディライン、ムーニャリウム。
四つの国の祖とされている四人の賢者は、悪い悪い大魔王を倒す勇者パーティだったのです!」
「勇者パーティ...って、何?」
「勇者は徒党を組んで魔王を倒すんですよ!」
「そんな話、聞いたこともない...」
「ええっ、皆さんご存知ないのですか!?びっくりです!びっくりぽっくり桃太ローリエです!!!」
「そんなのどうでもいい、早く続けろよ」
「では、こほん。
勇者パーティという名の光をひっそりと付け、草むらの陰からじっくりと人間観察・および勇者パーティ観察をしていた私は気がついたのです。
世界を支配せんとする邪悪を、打ち倒す光の力。
それこそが、真に世界を支配する最強の王の力...いや、王を超越する神の力なのではないかと!!
しかし.........その神の力の一端を一方的に借り受けさせてもらうというのは...なんだか悪い気がしませんか?」
彼女は首を傾げ、考えるような仕草をした。
そして「うん、うん」と自分で自分に納得したように頷いた。
「他人に迷惑をかけることは良くありません。そういう人智を超えた計画は自分の力だけで、やるべきなのです。」
「は...?」
「ですから私は、神の力の使い手に甘んじるのではなく、自分自身が光の力そのものに...
<人間>という薄汚くて浅ましい属性を捨てて、清廉で純潔で神々しい<
そんなふうに、私の計画は、始まったのです!!!!」
「迷惑をかけるのは良くないって...たくさんの人に散々迷惑をかけているくせに、おかしなことを言うんだね」
サマーは言った。
するとコズミキ=コニスは考える動作をした。
「迷惑...ですか?むしろ、感謝が必要ですよね?」
そして大きく手を広げた。
「だって彼ら下々の民たちは、あなたのお父さんが催眠されたのがおかしいって...王としての責任感がないって言ったんです。ひど過ぎませんか!?最低です!!
だから、あなたたちはもっと簡単に催眠されるんですよ!って、身をもって教えてあげたんです。
それのどこが迷惑なのでしょうか?自業自得ではないですか?因果応報ではないですか?
悪い奴や嫌な奴は、客観的で冷静な価値観を持つ-まさにここにいる私たちのような人間が-責任を持って攻撃して。
貶して、ぶちのめして、辱めて、これ以上ないくらい痛い目に合わせて二度と立ち直れなくしてやることこそ、理性ある人間世界の自浄作用といいますか、正常な状態だと思いませんか?
それこそが薄汚い<人族>にわずかに宿る星なる善です。人は善でなければいけません。
悪人が行きすぎた正義を騙ること...よくありますよね、本当に嘆かわしいことです。正義は人を暴走させます。
今回も、何も知らない愚かな民が一端の...それも真偽すら定かではない情報だけで、自分を正義だと信じ込み、あなたの父を悪だと貶し蔑んだ...そんなことは絶対に許してはなりませんよね?」
彼女はパンと手を叩き、笑顔で続けた。
「さあ話を戻しましょうか。
私はこの<星の神杖
そののち、この星なる杖の複製品をいくつか生産・販売しましたが、購入した誰もが、普通にいい感じの杖として使いました。
...わかりますか!?
私だけが!
星なる神と交信できた!!
つまり、私には星なる神としての適正があると!そうとしか思えなかったのです!」
コズミキ=コニスは嬉しそうにドヤ顔をした。
「そうか。なら勝手に神にでもなんでもなればいい。でも、だったら他人を巻き込むなよ。もちろん、きょうだいや子孫もだ。」
僕は強く言った。
「えっ?どうして...?」
コズミキ=コニスは本気で困惑した顔をした。
「民たちだけの話じゃない。
ウィンディライン王を操り僕を地下牢に入れ、サマーを磔にし、その後ウィンディライン王も同じ目に合わせた。
それが迷惑に巻き込んでないって本気で言っているのか?
僕やウィンディライン王はお前にとって、裁かれるべき悪か?
もしそうだと言うなら、争わせてもらう。
もし世界中の人間がお前と同じ思想になって、悪だと貶され蔑まれたとしても、僕はやりたいことをやるし、守りたいものを守る。
僕が美しいと感じるものを、壊させたりしない。
もし壊れてしまったとしても、また何度でも作る。世界から消させたりはしない。もう二度と、なかったことにさせたりなんかしない。」
「幸い、おれたちには催眠は効かないんだろ?」
間髪入れずにそう言ったのはトキロウ。シロもバウと鳴いた。
「私たちはロゼットと行く。支配されて家来としてついていくんじゃない。
隣に立って、一緒に歩いていく。」
サマーはそう言うと、僕に微笑んだ。
するとコズミキ=コニスは言った。
「いえいえそんな!むしろロゼットくんは、凄まじいほどの善ですよ!
でもね、私があなたやウィンディライン王を迷惑に巻き込んだというのは.........
ちょっと、ううーん.........本当にそうでしょうか?」
「は?」
「本当に"私が"巻き込んだのでしょうか?」
「そうだろうが、それ以外に何があるって言うんだよ」
トキロウは言った。
コズミキ=コニスは不気味なほどに、純粋で、屈託のない笑顔を見せた。
「封印されていた私が、シエルちゃんに憑依できたのは何故でしょうか?
思い出せますか?」
彼女はそう問うた。
しかし答える間も無く彼女は言った。
「答えは簡単です、ロゼット=フラストノワール第二王子!
セントラル!!!!ブランク!!!!アカデミー!!!!!!!!!!!!!!!!」
「.........は?」
悪寒が走った。
「私が封印されている場所...大陸のへそ。そのちょうど真上にロゼットくん、あなたが作ってくれたからですよ!
大陸中から貴族や王族が通える学校をね!!」
「..................っ!?」
一瞬、意味がわからなかった。だけど状況を理解して、怖気にまとわりつかれる。
僕の頭の中をぐちゃグチャにかき乱さんと、そのまま彼女は言葉を続けた。
「最初から全部、あなたのおかげだったんです。
私が復活してシエルちゃんに憑依できたのも、あなたのお兄ちゃんに魔法を教えられたのも、お兄ちゃんがあなたに嫉妬するあまりフラストノワールを滅亡させてしまったのも、サマーブリージア王女やみんながあなたやフラストノワールのことを忘れてしまったのも、ウィンディライン王が私に洗脳されたのも、そんなウィンディライン王に地下牢に閉じ込められてしまったのも、地下牢で私に老化させられたのも、お兄ちゃんのおかげで地下牢から脱獄できたのも、サマーブリーちゃんが処刑されそうになっていたのも、その後2人で逃げられたのも、お兄ちゃんを殺すことになってしまったことも、そして今私が計画を遂行できるのも、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部!!!!!!!!!!!
ロゼット=フラストノワール第二王子、あなたのおかげなんですよ!!!!!」
それを聴ききる。その頃には僕の息はもう、乱れ切っていた。
そいつがグイッと僕を覗き込む。
あの切れ目が合わさった星型の紋章が刻まれた瞳は、僕を責め立て嘲笑っているようだった。
「...僕がっ...やってきた、ことが......?」
「はい、あなたのおかげで、私はここまで来れました。
ありがとう、"黒幕"のロゼットくん。」
すると彼女は顔を赤らめて言った。
「私、その、実はあなたのことが............だっ、大好きですっ!!」
「はぁ...はぁ...はあ...はあっ......!!」
呼吸が乱れ、気を失いそうになる。
「「ロゼット!!」」
サマーとトキロウ、そしてシロが僕に駆け寄り、支えてくれたのがわかった。
だけどそれでも視界がぐらぐら揺れて、そして、完全に倒れこみそうになって...その時だった。
「待って、待ってください!!」
その声に、僕の意識はギリギリ止まった。
「えっ?」
コズミキ=コニスは足元を見た。
足元で踏んづけていた、気絶していた、彼女を見た。
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