第51話 3話スズランの心(カフェオレとパウンドケーキとお友達)
小さな来訪者その2とでも呼べばよいのか、女の子はテーブル席に腰かけ、親の仇でも見るかのような鋭い目つきでメニューを睨んでいた。
「どうぞ」
新が例の栞を持ち戻ってきたら、ミアのお決まりのどうぞが発動していた。
恐らく何も頼んでいないのに何で? という事なのだろう、更に険しい顔でミアを見つめる女の子。
「なに?」
「カフェオレとフルーツパウンドケーキです」
そう言って小皿に乗せたパウンドケーキを2切れと、マグカップに入ったカフェオレを差し出していた。
今日は珍しくシンプルだなぁ、などと思っていると、2人が戻ってきた新に気が付いた。
「ただいま・・・今日は普通だな」
「まるで私が、いつも普通じゃないものをお出ししてる、みたいないい方やめてください」
「違うのか?」
新の目から見たら何時もミアが出しているものは、わりと特殊なものなきがしてならない。
ローズヒップに桃の烏龍など、普通に出てくるか? と疑問を投げかけたくなる感じのものが多きがした。
それが悪いというわけではないが、ミアが何を基準にいつもお客さんにお茶や菓子を出しているのか不思議で仕方なかった。
「・・・・」
「食べないのか?」
テーブル席まで来ると、少女がパウンドケーキとカフェオレ、新とミアを交互に見て怪訝な顔をしていた。
「知らない人から、食べ物もらっちゃいけないって」
ああ、なるほどぉ、と俺もいあも思ったが、どうしたものだろうかと思っていると。
「私ミア、貴方のお名前は?」
「江梨香です・・・・」
「お友達になってください!」
「はぁ?」
「へ?」
少女、江梨香がぶっきらぼうに答えた後、何を思ったのか、ミアが突然頭を下げて右手を差し出し、友達になってくれと言いだした。
これには新も江梨香も2人同時に間抜けな声が出てしまい、何を言い出してんだこの人はという目で2人してミアを見る事となった。
「2人ともぉ、何ですかその(こいつ頭おかしい)みたいな目は!」
「自覚あったのか?!」
「新さん、こんばん抜きで」
「まてまて、冗談だよ。場を和ませるためのな?」
分かるだろ?
そう投げかけるが、ミアは拗ねてしまい、そっぽを向く。
「お姉ちゃん・・・江梨香が友達になってあげる」
そんなミアの子供っぽさに惹かれたのだろうか、江梨香がミアの服の裾を引っ張り振り向かせると、小さな右手を差し出しそういった。
まだ表情は硬く、警戒もしているだろうが、それでもミアを受け入れようとしてくれているようだった。
江梨香の気遣いを知ってか知らずか、ほら見なさい、という様にドヤ顔を新に向けてから江梨香の小さな右手を優しく握り返していた。
「はい、ではお友達からの最初のプレゼントなので、食べてくださいね」
「良いの?」
「はいぃ」
なんとなく話の流れ的にそうするために段階を踏んだのだろう、そうは思ってはいたが、ミア自信が割と感情表現が素直すぎて、演技なのか本気なのか新は見分けが全くつかなかった。
「おまえぇ・・・」
「何ですその、大人げない。みたいな反応は! 私はお友達少ないので、嬉しいんですぅ!」
「子供か!」
子供で良いですよぉ、という捨て台詞を残し、ニコニコと満面の笑みを浮かべてカウンター奥へと戻って行く。
やれやれと思いながら、ここに居ては食べずらいだろうと思い、新も戻ろうとした。
「お兄ちゃんお姉ちゃんの彼氏?」
「は?!」
いきなり投げかけられた質問に動揺して、裏返った声が出る。
今までその様な事は一度たりとも考えた事は無かったが、傍から見ればそう見えなくもない気はしなくもない。
「ちが・・・」
「違うのにお姉ちゃんアレだけど」
「アレ?・・・何してる」
即座に否定しようとした矢先、江梨香が指さして示した先で、頬に両の掌を当てて、くねくねと身を食寝させながら頬を紅葉させている変質者がそこに居た。
「おい、ポンコツシスター」
「いやだぁ、彼氏だなんてこんな素敵な人」
「良いからお前は少し黙らねぇか!」
聞いてるこっちが恥ずかしくなるような、そんな事を口走るミアに慌てて駆け寄り、新はその口をふさいだ。
新は恐る恐る江梨香を見ると、江梨香が含み笑いを浮かべている。
子供なのに、どこでそんな事を覚えたのだろうかと言いたくなるような、そんな完璧な含み笑いに若干イラっとした新。
その怒りの矛先を子供である江梨香に向けるわけにもいかず、ミアの左右のこめかみを拳で押さえつけると、ぐりぐりとねじりながら締め付けた。
「いやぁぁぁ、うぅぅ、やめぇぇぇ」
「やかましいわ、お前は少し反省しろ!」
「うぃぃぃぃ、お友達なら助けてぇ~」
手を伸ばし、江梨香に助けを求めるミアだったが。
「面白いですねお二人とも」
そう言いながらパウンドケーキを食べつつ、カフェオレでいに流し子居ながら、ミアが新にお仕置きされてる姿を眺めてお茶を楽しんでしたのだった。
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