花弁語
九戸政景
第一話 前編
よく晴れた日の昼下がり、人気の無い町外れにその生花店はあった。名前は『
そんな『語部生花店』にある日一人の人物が訪れた。その人物は短い黒髪の大人しそうな男性であり、キョロキョロと辺りを興味深そうに見回していると、バックヤードから店主の女性が静かに姿を現し、ふわりと微笑んでから話しかけた。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
店主の女性の登場に男性は一瞬驚いた後に静かに答えた。
「あ、いえ……散歩をしていたら不思議な生花店があるなと思ったので、ちょっと入ってみたんです。あの……お店の名前の『語部生花店』っていうのは、貴女の名字からつけているんですか?」
「はい、それもありますけど、ここに来るお花達から様々な話を聞く事が出来るので、それも由来になっているんです」
「花から話を……? えっと、よくわからないんですが……」
「それなら、早速聞いてみましょうか。その日によって話してくれる花は違うので今日は……」
そう言うと、店主の女性はカレンダーに目をやる。
「……四月一日。それじゃあ今日はこの子ですね。さあ、この子に耳を近づけてみてください」
「は、はい……」
店主の女性に促され、男性は水を張ったバケツに入れられた“サクラ”の花に耳を近づけた。
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