蝶
みなさんどうもお久しぶりです
雨が降っていると妙にテンションの上がる私です
雨といえば、昨日一日中降っていましたね
朝から晩まで、雲も忙しいものです
さて、昨日の夕方ごろ、私は友人と共に下校していました
学生ですからね
もちろん、雨が降っていて、傘を二人ともさしていました。
私は基本的に周りを見ていないので気づかなかったのですが、友人は地面にいる小さなお方を見つけました。
一匹のアゲハ蝶でございます
地面を這うだなんてめずらしいなと思い、二人でしばし観察していました
どこか挙動がおかしくて、ガクン、ガクンと翅を動かしていました
ちょっと怖かったですね
水を弾く鱗粉があるとはいえ、さすがに強い雨でしたのでかわいそうだなと近くの花壇に移動させようと思い地面に手をつきました。
ちょうど、アゲハ蝶は動き始めていて、進行方向に手を置いて待ってみました。
どうせ触覚が手に触れたらびっくりして逃げるかな、と思っていたら、意外なことにそのまま私の手に乗りまして
驚きと感動と「生きている!!」っていう衝撃で心がごちゃまぜになりました
ぴた、ぴた、と私の手の上でアゲハ蝶が動くのを感じながら、近くの花壇に手をおきました。
ゆっくりと花壇に降りていくアゲハ蝶を見て、またしても感動しました。
必死に草にしがみついていました
その後10歩ほど友人と歩いたのですが、やっぱりアゲハ蝶が気になってしまって、回れ右をしてまた花壇の方へ向かいました
変わらずにしがみつき、ガクン、ガクンと翅を動かしているのを見て、どこか悲しくなり、しばらく持っていた傘で雨風を防いでいましたが、さすがにこちらも用事があるもので名残惜しくもその場を離れました
翌日、雨が上がり、朝の空の色も私の好きな雰囲気で私は非常に上機嫌でした
歌いながら通学路を歩いて、ふと、地面を見た時でした
また、蝶がいたのです
羽の色がくすんでいたのでシジミ蝶かな〜 昨日のアゲハ蝶みたいに怪我でもしてるのかな〜としゃがんで、近くで観察してみました
昨日のアゲハでした
いえ、昨日の子かどうかなんてわかりません
ですが、ここ最近でアゲハが飛んでいるのなんて、昨日の一匹くらいだったのです
それに、妙な納得感がありました ああ、きっとあの子だ、って。
翅は鱗粉が剥がれ落ち透明で、変な方向に曲がっていました。
体は空の方を向き、じっと、動かずに。
私は息を呑み、固まった思考でどうにか「踏まれたりでもしたらかわいそうだ」とかろうじて考えて、近くの、昨日とは別の花壇に連れて行こうと思い、アゲハを掬い上げた時でした
かさ、と音がしたのです
固まった液体のりを、剥がれ落とすときのような音でした
車も走っていてうるさい朝だったはずなのに何故か、はっきり聞こえました
乾き切って、昨日よりも幾分か軽くなったアゲハを、慎重に道の端の誰も踏めない生垣の下においた私はしばらくの間放心した状態で、歌っていた曲の歌詞の続きを口ずさみました
だんだんと涙が込み上げてきました
自然と死んだ生き物の体なんて、一度も触ったことがなかったのです
昨日まではしっかりと生きていて、動いていて、重みがあったアゲハ蝶と、あのカサカサになってしまったアゲハが、同じだなんて思えませんでした
ですが、同じなのです
きっと、同じアゲハです
なぜかそう思うのです
私の人差し指と中指と薬指には今も、弱いけど生きているピタ、ピタ、としがみつく、アゲハ蝶の足の感触があります
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