第211話 見えない技
北岡の回避の癖、それは、左側の攻撃は打点をずらしてのガード、右側の攻撃は基本避ける。
一ノ瀬は、意外にも攻撃を受けながらもしっかりと、見ていた。
ハイキックを受けていたが、倒れてはいない、体勢は北岡の方が悪い。
(勝負を決めるつもりの大技だったみたいだが、俺は打撃じゃ倒れない、これで終わりだ)
左の拳を握りしめる一ノ瀬。
避ける事は出来ない、ガードもその腕では無理、一発決めれば俺の勝ちだ、一ノ瀬はそう思い顔面めがけて左のストレートを繰り出す。
と、同時に一ノ瀬の目の前が真っ暗になった。
一ノ瀬は、白目を向き、勢いよく、頭からリングに倒れ込む。
一瞬の出来事だった。
誰もが、何が起きたのか理解できてなかった、ハイキックを食らい、反撃しようと動いた瞬間、一ノ瀬が倒れ込んだようにしか見えなかった。
観客がざわめく。
「まじかよ」
櫂と石森は当時に呟く。
比嘉は満足そうな笑みを浮かべていた、自分が推薦した男、1回戦で負けてもらっては困るといった感じだ。
誰も見えなかった打撃。
その正体は、欠損している右腕での右フック。
そのスピードは、意識しなければ見ること出来ない、北岡の最大の武器。
「ただの肘打ちとは違うな」
結果から肘と判断した武田、その言葉に反応したのは涼香だった。
「そうなの」
「ああ、肘打ちをする時にこう構えるだろ、ちょっとやって見てみろ」
涼香は、素人ながら肘打ちの格好をし、肘打ちをしてみる。
「どう違うのかな」
その答えは櫂が答える
「肘から上からが無い、攻撃をした時に肘上が邪魔にならずに振りきれる」
実際はどうかは、わからないが、その理論は目の前で証明されている。
石森は、自分の最速の攻撃と同じスピードと判断したが、威力は桁違いだろうと感じた。
そんな石森の肩に櫂は手を置く。
「心配するな、お前なら避けれる」
そう言いながらも、櫂は考える。
あの右が単発なら避けれる、しかし、あの脚技のコンビネーションの組み立てからだと、どうだ、カウンターに使われたら避けれるのか、あの右を餌にされたら時の対処は、勝ち上がれば決勝の相手だが、その可能性は低い事も櫂は知っていた。
北岡の最大の弱点を知っているからだ。
北岡の相性の悪い相手、フィジカルに優れ組み技を主体として対打撃にもある程度対応できる者。
このトーナメント参加者であれば、柔道家矢野の プロレスラーのレオ、関取の天空、といった所だろう。
(天空は敗退、レオと当たれば確実にレオに有利だろう、しかし、レオは俺達が倒す、不利は俺達も変わらないが、切り札がある、矢野との試合は興味あるが、着衣なしであっても矢野なら問題なく戦うだろうな)
(一ノ瀬は、組み技を主体でコピー出来てなかったのが敗因だな)
北岡は、大歓声を受けてながらニュートラルコーナーへと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます