第109話 一瞬の隙
(最初の奇襲からは単発の前蹴りか)
熊殺は、天外の動きを一つも見逃さないように、モニターに集中している。
対修羅を意識していたが、実際の戦いは噂でしか聞いていない。
阿修羅とは、二度対面している阿修羅との戦いは阿修羅自身の腕力、体力差を意識した戦いが主だが、阿修羅にも一撃で試合を決する『技』を持っている事もある事を知っている。
それは、勿論天外も持っているだろうし、秘匿としている技もあるはずだ。
(可能であれば、戦う前に『修羅の技』を確認したい所だな)
戦いの主導権は、天外がまだ持っている。
左右のワンツーから、左のローキック。
九条は、『誘い』を警戒し、一旦は回避のみ行う、流石に『最強の修羅』がこんな単調な技を組み立てるはずはない、後の先が得意とするなら、自身の攻撃に返し技を当てると判断する。
天外は、単調の攻撃を何度か繰り返す、時間制限は無いので焦りもないが、九条からも仕掛ける。
前置きなしの右ストレート、ダッキングで躱す天外に左の上げ掌底。
天外は、避けだけで、反撃はない。
(これが、最強の戦いか)
九条含め、観客、選手が落胆の感情がもれる、しかし、その一瞬の感情の隙を天外は、見逃さなかった。
鼻先を狙う右前蹴り。
感情の隙はあったが、身体は本能で回避、しかし、攻撃動作に繋がる回避ではない。
(ここだ)
天外は、上げた右脚の踵をそのまま、九条の右脚の甲に向かって振り下ろす。
修羅の技の一つ、『砕骨』
通常であれば守りを固めた相手に行う技。
(守りに徹してない相手でも、れんけいの中では使うけど、タンパツでかかるの)
修羅は、次の展開に胸が揺れる。
結果としては、砕骨は、完璧な形で決まる事はなかった、九条も、一拍遅れたが攻撃の手を出していたからだ。
その九条の右正拳突きを天外は避けならが、砕骨を繰り出しために、中途半端にしか決める事は出来なかった。
(脚を踏んだだけだ、骨まではダメージはないな)
本当は、避けながらでも、砕骨を成功させるつもりであったが、判断を誤った、天外は、ほんの少しだけ体勢を崩す。
本当にほんの少しだけ、普通であれば問題ない、ほんの少しの間。
しかし、九条にとってはそのほんの少しの間で仕掛けるには十分過ぎる間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます