第73話 鍵 中編

 「本日のセミファイナル、ファイブスタープロレスから緊急参戦、女子プロレスラーアスカ、対するは国内異種格闘技戦のチャンピオン、青木静香」


 「今日の試合は、青木選手の当初の対戦相手がドタキャンしたに三日前に急遽決まったカード、二人はどのような試合をするのでしょうか」



 アナウンサーは、興奮を抑えながら、場内に説明、二人は選手はお互いのコーナーから睨みあいをしている。


 対戦相手に事欠く女子格闘技、同じ相手と戦う事も多く、また対戦相手を確保するために階級の調整を強いられる事も多い、今回はまた、海外からなんとか呼べたが、減量失敗。


 女子格闘技界隈が下火の様に感じたが、反して女子プロレスは勢いは凄まじく、まるでアイドルの様な売り出しをしている女子プロレスに青木は強い憤りを感じていた。

 

 (女を売って格闘技してんじゃないぞ)


 レフリーの合図で、お互い距離を縮める、身長差、体格もまったく違う両者、体重も配慮しない異種格闘技戦。


 まるでバベルの前哨戦にも思えた。


 

 始まりを合図するゴングと歓声が場内を包む。


 「さぁ、始まりました、注目の一戦、ルールは、肘、膝あり、寝技もありますが、硬直と判断した時にはレフリーが入ります。」


 「また、アスカ選手の要望でラウンド制はなく、十五分の判定、もし判定が五分の際には、5分の延長戦があります、その希望は青木選手も飲んでいます。」


 「さぁ、注目のファーストコンタクトです」



 青木選手は小刻みに身体を揺らして、中間距離に入る。

 アスカからの動きはない、青木はもう一歩踏み込み、強めに左フックを繰り出す。


 速い。


 カウンターも避ける事も間に合わず、両手で守りを固めるのが精いっぱい直撃を避けたとはいえ、その勢いに面食らう。


 (危ない、予想よりパワーあるな)


 「ダウン」


 レフリーの声で、アスカは自分の片膝がついてる事に気づく。


 ダメージは全くない、青木は追撃せず、余裕の笑みを見せていた。


 (舐めやがって)


 アスカは、ダメージ無いことをアピールし、軽くジャンプして構えを直す。


 ファーストコンタクトは、青木に上がるが、まだ戦いは始まってもない。

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