第10話 「は? え…………えw?」


 人ってこうも豹変出来るものだろうか?

 確かに裏があるとは読んでいたけど、細い糸の様な目で微笑み続けていた人が、突然に目尻を吊り上げて血管を顔中に浮き上がらせている。


 怖い……いやマジで震える。こんな学校の先生いたなぁ……。


 え、てかこんなに体格良かったんだこの人……


 2メートルにもなる巨体、盛り上がった筋肉が神父服の上からでも良く分かる。


「臭うぞ……臭う……くせぇくせぇドブネズミィ!!」


 ていうか何なのよこの人……。

 ハッピーエンドって所で突然現れて、どうかしちゃったみたいに怒り狂ってるし、訳分かんない事ばっか言ってるし……そもそも台詞が聖職者のものじゃないよぉ。


 ずるずると鉄製の十字架を片手で引き摺りながら、神父は大股で詰め寄ってくる。

 エリーちゃんが心配そうに俺を見つめていた。


「え、なんで神父様が……ケイン?」

「分かんないよエリーちゃん……でも、危険だからさがって! エリーちゃんは、何があっても俺が守るから!」

「え……ッ」


 頬をカーッと赤らめるエリーちゃん。これは今夜頂きだな……ふへwww

 さーてと、後はこのイカれた聖職者を倒すだけっとw


 神父の胸元で、銀の十字架のネックレスがブワッと光って浮き上がる。そしてその切っ先がフワフワと浮かんで俺に向いてきた。


「異世界から来た意地きたねぇ亡者がぁ。その汚れた足で神の園に踏み込むじゃねぇ――ぇえ゛ッッ踏み込んでじゃねぇえええよぉおお!!」


 え、え、え、ちょっと待って、そのネックレスって異世界から来た人を探知する的な何かですか!?

 これじゃあもう言い逃れ出来ないかぁ……。とほほ


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 確かに〜俺は別の世界から来たけど、それは神様が許してくれたからで……」

「あ゛ッ!?」

「それにそれに、俺別に悪い事してないですよ? む、むしろこの世界を危機から救ったって言うか……」

「あぁあ゛ンッ!!」


 目を見開いた神父は、カタカタと震えながら額の血管から血を吹き上げていた。

 思わず激怒させてしまったと怯えていると、案の定神父はつばを飛ばしてわめき始めた。


「そんな神いるかぁ!! いるなら連れて来い! ケツの穴から銃剣突っ込んで内蔵ぶちまけてやるからよぉお!」


 ちょ、ちょっと、待ってよ! この人全然話しを聞いてくれないんだけど!?


「無茶苦茶だよこの人っ! ねぇみんな!」


 俺は助けを求めてみんなの方に振り返った。








「………………え」






 みんなが、冷たい目をして俺を見ていた。

 さっきまでの温かいのとは違う、まるで汚物を見つめるかの様な……


「異世界から来たって……」

「そう言ったよな」

「え、うそ、ケインが侵入者だっていうの? 私信じないよ!」

「でも……今本人が認めたし、神父様が!」


 ――なに、みんなどうしたの?

 いつも俺の味方をしてくれたじゃないか……

 いつだって俺に都合の良い様に……


 えwwwwww?


「ぉおおえええ!!」

「エリー……ちゃ……ん?」

「おおおえ!! 汚い……汚い汚い汚い汚い!! けがれた、穢れたんだ私!」


 エリーちゃんは、四つん這いになって泥水で口をすすいでいた。


 なに、何が起きてる……の? 

 え、それって俺とキスしたからそんな事して……る?

 

 だってさっきまで……みんな。








 えw?

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