『ぱんだにんげん』

やましん(テンパー)

『ぱんだにんげん』

 『これは、フィクションです。このよとは、無関係です。』




 小さな庭の門扉をうっかり開けておくと、ばんだにんげんさんが入り込んでくる。


 ぱんだにんげんさん自体は、ちっとも、危険ではないが、問題は、その後に付いてくる、当局者なのだ。


 ぱんだにんげんさんを、おとりにする、ひきょうな連中である。


 メン・イン・シロクロ、と呼ばれる。


 それは、シロクロまだらのスーツに身を包み、ぱんださん帽子を被っているのだ。


 ぱんだにんげんさんは、遺伝子操作によって作り出された、疑似人間である。


 本体は、噂では、逮捕された人間のこともあるらしいとも言われたが、公式には、それ以外だとされていた。


 なんで、そんなことになったのかは、よく分からない。


 しかし、かれらは、ぱんだにんげんさんが、誤って入り込んだことを理由に、謝罪として、家の中にまで入り込んで、なにか、禁書とか、禁断の品物とかないか探すのだと言われる。


 ぼくのお家には、むかしの、レコードとか、楽器、楽譜を、隠しておいている。


 現政権は、かなりなナショナリズムで、独裁常態で、欧米の音楽を、禁止ではない、と言いながら、実際は一般には禁止している。


 欧米の要人が来ると、パーティーでは、あえて、洋楽を演奏する。


 そうした品を、もしも、持っているなら、図書館などに提供しなさいと言う。ほとんど、タダ同然で。つまり、寄付である。


 むかし、第二次大戦中にも、そうしたことがあった、と、父から話は聞いていていた。



       

     📻️




 あるひ、うっかり、門扉を少しの間、開けていた。


 その、ちょっとの隙に、ぱんだにんげんさんが入り込んだ。


 それを、シロクロの人が、ふたり、追いかけてきたのだ。


 男女のペアである。


 謝罪したい、ちょっと上がらせてほしいと言うのだ。

 

 拒否は、当然できるが、その場合は、後刻、こんどは、黒服が来る。


 なんとか容疑で、家宅捜索するのだ。


 こうなると、下手すると逮捕されかねない。


 シロクロの場合は、見つかったら、供出したら、それですむ。


 しかし、ぼくは、絶対にいやである。


 だから、地下に隠している。


 入り口は、戸外の物置小屋にある。


 外部からは見えないようにしている。


 家のなかを探しても、分からないはずだった。


 かなり、昔に核戦争のときの、シェルターとして、父が作った。


 仕方ないから、家に上げてやった。


 缶コーヒーも出した。


 ぱんだにんげんさんは、おとなしく座って遊んでいる。かわいい。


 世間話をしているうちに、ひとりが、お手洗いに行きたいとおっしゃる。


 お手洗いは、物置小屋の真ん前だ。

 

 なんだか、怪しいぞ。


 彼らは、ある種の探知機を持っているとの噂があった。


 知人は、畑に埋めていた、たくさんの、ジャズのCDを、根こそぎ収穫されたと言っていた。


 案の定、お手洗いに行った男は、物置小屋を見学したいと言う。


 物置小屋を見学するのか?


 珍しい造りだから、とか、言う。


 仕方ない。拒否したらやっかいになりかねない。


 入り口は、簡単には分からないはずだ。


 しかし、まあ、見つかるだろうな。


 覚悟はした。


 すると、そのとき、ぱんだにんげんさんが、突然暴れだしたのだ。


 そうして、連れの女性を殴り倒し、さらに、うちの花瓶や、焼き物を幾つか破壊した。


 これは、犯罪である。


 彼らは、体面を失った。


 それで、なんとか、通報はしないでください、と平謝りし、ぱんだにんげんさん、を、つれて立ち去ったのだ。


 

 それから、半年、まだ、何もない。


 



            くまくま🐻


 


 

  

 

 

 


 


 

 

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『ぱんだにんげん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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