脚本家デビュー

丸子稔

第1話 青天の霹靂

 私、丸子稔は、カクヨムで小説やエッセイを書く傍ら、二年前から映画やドラマの脚本の公募にも挑戦してきました。

 そして、ついに、あるテレビ局の公募で大賞を受賞し、プロデビューすることになりました。

 

 そもそも、私が脚本を書くようになったのは、脚本は小説のような文学的表現をしなくて済むからでした。

 私はとにかく文学的表現というやつが苦手でして、自作の小説にもほとんど使っていません。

 それが小説といえるかどうか分かりませんが、使おうとすると、なんかむず痒くなっちゃうんですよね。

 

 皆さんも学生時代に学芸会などで脚本を見たことがあると思いますが、大まかに言うと、脚本はト書きと台詞で成立していて、そこには文学的表現は一切使われません。

 なぜなら、それをすると、演者が混乱するからです。


 脚本はとにかく演者に分りやすいように仕上げないといけないので、表情や仕草等どこまで書くかの線引きが難しく、その点については多少苦労しますね。


 小説が、地の文、会話、描写をバランスよく書かなければ評価されないのに対し、脚本は内容さえよければいいと思い込み、私は最初ロクに勉強もせず脚本を書いていました。 


 しかし、書いても書いても一次選考で落とされる現実に、これではいけないと思い、私はネットで調べて脚本についての著書を図書館で数冊借りました。


 それらを読んでいくうちに、私は今まで脚本のことがまったく分かっていなかったのを思い知らされました。


 脚本は小説より楽だと思っていたことは大間違いで、なんなら脚本の方がはるかに大変です。


 とにかく覚えないといけないことが多いですし、テクニックも使わないといけません。

 そのテクニックも、売れっ子の脚本家が使うのは、かなり高度なもので、素人には到底使いこなせるものではありません。


 しかし、書いているうちに、段々とテクニックも使えるようになり、公募も二次選考まではいけるようになりました。


 そして、初めて最終選考に残っていた作品が、先日大賞を受賞したのです。


 でも、浮かれてばかりはいられません。


 ドラマ化するにあたり、プロデューサーや演出家の意見を聞いて脚本の修正をしなければいけないので、ここからが大変です。


 彼等からどんなダメ出しをされるか、今から戦々恐々としています。



 


 


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