epilogue.

「はい! おはようございマス、結々ゆゆ!」

 翌日。登校すると雫は元気よく挨拶してくれた。その表情は眩しく、陽の光を浴びているみたいに胸がポカポカする。

 だから、自然と声が弾み、彼女の手を取っていた。

「ね、ちょっと来て!」

 そのまま教室から飛び出し、人気ひとけのない階段の踊り場へと連れ出す。

 そして、

「あのね、聞いて! 私。 今度、プロも出るフェスのステージに立つことになったんだ」

「ほ、本当デスカっ! すごい! 流石、結々ゆゆ! すごいデスっ!」

「それでね、大切な話があるの」

 あの日、わざわざ峰村先生に口止めをお願いしたのは私が直接言いたかったから。

「雫にも一緒に出てほしい」

「え? 私が、結々ゆゆと。 で、でも……」

 雫が戸惑うのも無理はない。だって、本当ならそこは私が一人で立つべきステージ。

 だけど、私は──



 *


 顔合わせの日。


『以上だ。 何か質問はあるか?』

『あの、一ついいですか?』

『何だ、宇佐美結々』

『パフォーマンス内容は自由なんですよね。 なら、私は友達と。 雫と一緒にステージに立ちたいです』

『何故だ?』


 せっかく認めてもらったのに、その返答次第ではこの話はなくなってしまう。

 それでも、


『もちろん、それが私にとって"最高ベスト"だからです!』


 今の私は一人じゃない。

 雫が手を取ってくれた日から二人で一人。この繋いだ【大好き】が今の私の全て。

 だから、神姫命あなたに応えるのは私一人じゃなくて、私たちの【大好き】。


『……全く。 ならば、結果で示してもらう』


 当然ただ私の要望が通る訳はなく、一つ条件を出された。

 それはフェス開催十日前にSNSへ投稿するPR動画で七千五百『いいね』を得ること。もしそれを達成出来なければ、私もステージに立つことが出来なくなる。

 でも、私は何一つ心配していなかった。


 *



 ──彼女とともに立ちたい。


「一緒に見ようよ! あのステージから見えるきらきらを!」


 だって、二人一緒ならどこまでだっていける。

 そう信じているから。




 *




「じゃあ、今日も張り切っていっくよー!」

「デス!」

 フェスに向けての新メニューを始めてはや一週間。その内容はずっとやっていた体力づくりにダンスの基礎練を加えただけでまだ初歩の初歩。でも、じっくり丁寧に基礎を培うことで雫は着実に力をつけていた。

 フェスで披露するのは私も雫もよく知る曲。歌詞も振り付けもほぼ頭に入っている。だから、こうやって基礎を積み上げていけば、本番までにはきっと。

「いやぁ、気合い入ってるね」

「ん? え」

 いきなり声をかけられ、視線を移すとそこには──。

「やぁ、来ちゃった」

「ええぇぇぇっ‼︎ し、織音さんっ⁉︎ なんで、ここに」




 To be continued.

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