epilogue.

結々ゆゆっ!」

 翌日。教室に入るや否や朝からお化けでも見たかのように慌てた様子の雫が駆け寄ってきた。

「大変デスっ! 大変デスっ!」

「二回言った」

本当ホントーに大変なのデスッ‼︎」

「ごめん、ごめん。 何があったの?」

「コレを見てクダサイッ!」

 言われた通り雫のスマホに目をやると、そこには私達の──アイドル部|(仮)のアカウントが表示されていて…………んっ⁉︎

「何これ。 なんで……なんで、こんなにもフォロワーが増えてるのっ⁉︎⁉︎」

 その数、およそ五千人ッ‼︎ 有名人でもなく、特に目立つようなこともしていない普通のJKでは考えられない数になっていたッ‼︎

「それだけじゃないデスっ!」

「え。 な、なんでぇっ‼︎⁉︎」

 さらに信じられないことに、あの神姫命にもフォローされていた。

「元の動画はすでに削除されているのデスガ。 誰かが昨日のライブの動画を隠し撮りしていて、それをSNSに投稿したようデス」

「で、本人の目に入って、こうなっちゃったんだ……」

 背筋がぶるっと震える。

 何だろう、ものすごく嫌な予感が。



 ──残念ながら、その予感は的中してしまった。



 放課後。案の定、私と雫は生徒指導室に呼び出されてしまった。

「この騒ぎは貴方達の仕業ですか?」

 今朝の雫と同じようにスマホを見せてきて、尋ねる峰村先生。パイプ椅子に座り、そんな風に聞かれると警察に取り調べを受けているみたいな気持ちに。

 恐る恐る先生の顔色を窺うと無そのもの。怒っているのか、はたまた別の感情を抱いているのかも分からない。声の感じからして前者ではないと信じたいけれど。

「いえ。 私達も何が、何だか、分かってなくて……」

「そうですか。 分かりました」

 先生はスマホをスーツのポケットにしまうと、腕を組みながら大きなため息をついた。その為に、より一層生徒指導室の空気は重くなり、アイドル部がどうなってしまうのか聞くに聞けない状況に。

「あの。 アイドル部はどうなってしまうのデスカ?」

「し、雫っ⁉︎⁉︎」

「部ではなく同好会ですが、認可されましたよ」

「ヒィッ、ごめんなさ……い、いいんですかっ‼︎⁉︎」

「そう言ったではありませんか」

「だ、だって。 この騒ぎで、もうダメかと……」

「確かに、大変な騒ぎでしたよ。 問い合わせがあったくらいには」

 にっこり微笑む先生。そのプレッシャーは凄まじくて、ついブルッと全身が震えてしまった。

「とはいえ、学校側が認めた以上、止める理由はありません。 約束通り顧問も引き受けます」

「じゃあ、本当に……このまま続けれるんだ。 アイドル活動を」

「やりマシタネ、結々ゆゆっ‼︎」

「うん。 うんっ‼︎」

 雫の笑顔に、笑顔を返す。

 ここから始まるんだ。私達の夢が。

「喜んでいるところ申し訳ありませんが、貴方達にはしばらく雑用をしてもらいます」

「え。 ざ、ざつ……よぉ……。 なんでですかっ⁉︎⁉︎」

「流石に、この騒ぎで何のお咎めもなしとはいきません」

「そ、そんなぁ……」




 ──この時の私はまだ知る由もなかった。あのSNS騒ぎの本当の意味を。




「久しぶり、でいいのかしら。 宇佐美結々」

「なっ⁉︎ どうして、貴方が……ここに……」

「貴方にコレを渡す為よ」

「え。 渡すって。 なんで」

「いいから受け取りなさい。 この私──」



【神姫命と戦うステージへの招待状を】



 2nd fin.

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