という名のプロローグ ぱーと2
さて、またまた唐突で申し訳ないのだが、ここで少し設定の紹介をしておこう。
時は、2124年。舞台は、日本。年号は、令和を越え、神楽、和尊をまたぎ、神蔵。2024年から数えて実に、100年後の世界である。
この時代の世界と、100年前の世界の大きな違いは一つ、能力の有無である。
...いや、能力の有無という言葉には少々語弊があるかもしれない。
人に、卓越した力を与える『能力』は、はるか1000年前、鎌倉の時代より存在していた。しかし、能力者の存在は、その危険性と希少さにより、各国の政府によってひた隠しにされていた。
ところが、毎年各国で30人前後の数増え続けていた能力者たちは、1000年の時を経て、何の皮肉か和を尊ぶはずの時代に、遂に政府も隠しきれない程の数を擁することになる。
さらにここから、能力の被害は、拡大の一途を辿る。
冷戦状態にあった各国間の争いの表面化。能力を携え、人の血を啜る快楽を覚えた動物たち、『血獣』の繁殖。能力によって一騎当千の強者となった『英雄』擁する各地方の独立による大国の分裂。
そして、その煽りは、我らが祖国、日本にも及んだ。
アジアの覇者、中華人民共和国が遂に分裂したのだ。北には、モンゴル民族を筆頭とする刹那主義を掲げる北中国が、西には、民主主義を掲げる西中国が、南にはこれまでの共産党が実権を握る真中国が、そして東では、漢民族を尊ぶ漢国がそれぞれ独立を宣言した。
これにより、事実上1/4まで弱体化した真中国は、アジア周辺諸国の征服及び吸収を画策。まず、手始めとして、軍力を放棄していた日本に軍を派遣した。
当然これに反抗の意思を見せた日本は、国民投票により、軍の復活を宣言。自衛隊と共に各地より新たなる兵力を召集。複数人の英雄の活躍により、真中国軍を完膚なきまでに叩きのめした。
そして、これが2124年現在、世界に名を馳せる軍事大国日本が誕生するきっかけとなったのである。
さて、あらかたの設定説明も終わったところで、本編に時を戻そう。
そんな軍事大国日本が誇る8つの軍隊のうちの1つ、日本軍第8独立師団総司令室にて、主人公こと濱栗あわびは頭を悩ませていた。
何にって?
勿論、勝手に拾ってきたフェンリルについて...
ではなく、
でん!!!!
勝手についてきた挙句、あわびの執務机に効果音が飛び出そうな程太々しく居座っているピンク色のまあるい化け物について、である。
フェンリルを一方的にボコすほどの怪物である。その戦闘力は推して知るべし。故に、あわびの一存で飼うわけにもいかない。
しかし、この様子からして、簡単に離れてくれそうにもない。
どうしようかと頭を悩ませながら、あわびはもう一度ピンクのもこもこを観察することにした。
縦幅は約5cmほど、横幅はその2倍ほどの豚の鼻の形をした輪郭に、豚の鼻の穴のような形をしたまあるいクリっとした黒い目、そしてその周りを覆うピンク色のもこもこ。さらには、輪郭の端からウサギのように垂れた耳。
「ふむ、やっぱりお可愛いですね。」
そこまで確認した後、ふとそんな言葉を溢したあわびの目が見開かれた。
黒い目の下、ピンクのもこもこに隠れた部分から少し覗いていた口の形をした隙間の形が、なんとかわったのである。
『て れ る』
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