第28話 シルバー、皇帝との初対面
「貴様がシルバーか」
帝剣城の最上階。
玉座の間。
帝国で最強の権力者、皇帝が君臨する至尊の部屋。
そこに俺はシルバーとして招かれていた。
帝国に生まれた五人目のSS級冒険者。
その圧倒的な実力を耳にした皇帝自身が、会ってみたいと言ってきたからだ。
それは皇帝として当然のことだ。
皇帝といえど、冒険者ギルドに介入はできない。
国を滅ぼせるレベルの実力者、SS級冒険者が帝国にいるのは、皇帝にとってはメリットとデメリット、どちらもある。
SS級冒険者は問題児ばかり。それに並び立つ者が帝国にいれば、大抵の問題は解決できるが、同時に問題も起きる。
モンスターは倒しました。しかし、周りの地形も破壊しました。
なんてこともざらだ。
権力者としては信用できるか確かめなければ、気が気じゃない。
「お初にお目にかかる。皇帝陛下」
「ふん、ワシの前でも仮面は外さんか」
「外す必要がないのでな」
一礼して、最低限の礼儀は示す。
しかし、へりくだることはしない。
皇子としてここに立っているならまだしも、今はSS級冒険者として、ここにいる。
簡単に御することができると思われては困る。
SS級冒険者の地位はそこまで軽くない。
「外せと命令してもか?」
「誰からの命令も受ける気はない」
「ほう……」
面白いとばかりに皇帝はニヤリと笑う。
そして玉座の間の脇から二人の近衛騎士隊長が姿を現した。
「この玉座の間では魔法は使えん。その仮面のような魔導具は別だがな。意味はわかるな?」
「実力行使に出れば逃げられないという意味か? 皇帝ともあろうものが浅慮なことだ。実力行使で仮面を外してどうする? 帝国にどんなメリットが?」
「ワシが気になる。それでは駄目か?」
「冒険者が帝国に寄り付かなくなるぞ? なにより……近衛騎士隊長程度で俺を抑えられるとでも? 舐められたものだ」
玉座の間を抜ければ魔法は使える。
だが、魔法の使えない魔導師が抜け出すのは至難の業。
しかし。
「帝国自慢の近衛騎士隊長では足りないと?」
「足りないな。俺を抑えたいなら勇者でも連れてこい」
「大きく出たものだ。ちなみにどうやって切り抜ける?」
「明かすほど馬鹿じゃない。ただ、魔導具は仮面だけではないと言っておこう。見たいというなら、そこの近衛騎士隊長たちをけしかければいい。多くのものを失う覚悟がおありなら、だが」
「……下がれ」
皇帝は近衛騎士隊長たちを下がらせる。
そして玉座から立ち上がり、俺の前までやってくる。
「非礼は詫びよう。ワシのいいなりになるような者なら、帝国から追い出そうと思っていたのでな。他人に尻尾を振る実力者ほど手におえんものもない」
「なるほど。では、認めていただいたということかな?」
「一応は、な。SS級冒険者のシルバー、我が帝国臣民たちをよろしく頼む」
そう言って皇帝は右手を差し出してくる。
その手を俺は握り返す。
「承った」
「ただし、暴れるのはほどほどにせよ。ワシはこれでも忙しい。後始末はごめんだ」
「心に刻んでおこう」
そう言って皇帝は俺を下がらせたのだった。
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