災難続き

今回の事件に関して、青園高校の先生たちは、一切何ごともなかったことにする。


つまり、生徒たちの自主性に任せているというのは、誠にいいことなのだが、完全に先生たちは、責任回避の行動に走っていた。そして、今回の事件に一番激怒したのは沙織さんだった。


「どうしてこんなことしたの?」


彼女の怒りの矛先は親衛隊長の堀川だった。ただ、今回の事件について堀川に怒りをぶつけても何も解決はしない。それは、サオカイダーは既に堀川達から一線を画しているのだが、実は、だれがサオカイダーかということはわからないのである。当然といえば当然なんだけど、堀川の協力も得て犯人探しが始まった。更に、佐久間と本田も犯人探しに加わったのだった。


まずは実行犯の女子生徒二人だ。


「めぐみ。その女子って誰だ?」


「それが、すれ違っただけで、全く誰だかわからないんだ」


「なんか思い出さないか?髪の毛が長かったとか…」


「髪の毛ね…」


全く気にも留めていなかったので、何も思い出せない。


「ははは…」


そんな俺を見たみんなは


「だめだこりゃ…」


「そういえば、沙織さんが助けに来た時、中棟へ戻る生徒見なかった?」


「だれも…」


南棟から中棟へは渡り廊下が2か所、しかも、1階から3階まであるのだから、沙織さんとすれ違う確率は6分の1、更に、犯人が沙織さんの教室から最短の渡り廊下を使うことを知っていたとしたら、ほぼ、沙織さんが犯人と出会う確率はゼロに等しい。


「つまり、実行犯の女子生徒2人については、手掛かりなしか…」


ということで次はというと、俺を呼んだ先生は誰かということになった。


「めぐみを音楽教室へ呼んだ先生については、やはりいませんでした」


「たぶん。そうでしょう」


みんなそのことは承知の上で確認をしてくれた。


「残る手掛かりは、教室で俺が音楽室に呼ばれているという声をかけた主だな」


実はここにいるみんなは、その声を聴いていた。すると、みんなが不思議そうな顔をした。


「だれだっけ?」


「さぁ‥」


「え?本田も知らないの」


「そうなんだ。あの声、誰だかわからないんだ」


「わたしも」


沙織さん、ペイペイちゃん、理奈さんも知らないという。けど、俺はあることを思い出した。


「横溝だ!!あいつが俺に呼んでいるって言ったんだ」


こうして、横溝を呼び出すことにした。


***


「え?俺?」


横溝の一言目.。そんな彼を俺たちは取り囲んでいる。


「たしか、俺に先生が呼んでいるって言ったよな」


「ああ…それ…あれは、立原がぼっとしているから」


「なぜ?それを?」


「どういう意味だ?」


「俺がぼっとしているのはいいけど、なぜ、横溝が俺に話してきたんだ?」


「だから、先生が呼んでいるって聞いて」


「先生が呼んでいるって聞いたってことは、その声の主は誰か知っているのか」


「え?」


おれの質問に躊躇している。しかし、彼は


「いや、知らない」


「じゃあ、何故、俺に呼んでいると言って来たんだ?」



「それは、立原がボーっとしてたからだ」


その答えは的を得ているようでそうではない。


「なんだよ。俺を疑ってるのか?」


このままでは喧嘩にしかならない。ということで彼との話は終わった。こうして、俺たちは声の主をクラスのみんなに声の主を聞きまわったのだが、誰も知らなかった。


こうして謎が深まるばかりであった。


***


横溝が一番怪しい…


その結論はみんな一致していた。しかし、証拠がない。ただ、彼の言動も含め怪しいと主観的なものとなっていてこれ以上はどうすることもできなかった。こうして事件は迷宮入りになるかと思われていた。


数日後・・・


「「ごめんなさい…」」


2人の女子生徒が俺の前で謝罪をしている。彼女たちの名前は横溝りんなと相沢香蓮。青園高校1年生で、紗耶香ちゃんと同じクラスだという。そんな彼女たちを連れてきたのは他ならぬペイペイちゃんだった。


「さっさと白状しなさい」


「はい…」


実は彼女たちは紗耶香ちゃんにかなり嫉妬していたようだった。ただでさえ学園のアイドル沙織さんの妹ということで注目を浴びていて、同学年の男子たちは紗耶香ちゃんに夢中らしい。当然、面白くない彼女たちだった。


「ところで横溝さんって、あの横溝の妹?」


「はい…」


実は、彼女たちの愚痴を偶然兄である横溝が聞いて、今回の作戦を思い立ったようだった。紗耶香ちゃんのせいで影が薄い彼女たちを実行犯として、俺にいたずらをして鬱憤を晴らそうとしたのだった。事件の概要はこうだ。横溝が俺に先生が呼んでいるからと特別教室がある南棟へ呼び出し、彼女たちが、キン〇ンとタイガ〇ームと龍〇散を塗ったビニール手袋で俺の顔を押さえつけるというものであった。

予想通りその強烈な浸透性で俺のは目をやられその場で悶絶したのであった。


「本当にすみません…」


2人は神妙に謝っているが横溝は言い逃れをしている。


「俺は知らん!!」


「だったら!!誰が俺を呼んだのだ?」


「知らん!!お前がぼーっとしていたから、俺は呼んでいるといっただけだ」


「お兄ちゃん!!」


「りんな!!変なことを言うな!!」


「う~!!」


するとペイペイちゃんが俺に耳打ちをした。


「あいつはかなり変わり者だから、相手にしない方がいい」


沙織さんも


「そうよ」


「わかった…横溝はかえっていいよ」


「当然だ!!」


ムカツク…しかし、みんなは冷静だ。


「あんなやつ、相手にしない方がいいわよ」


「そうよ」


すると佐久間と本田も


「あいつにはかかわらない方がいい」


そして、残された二人…しょんぼりとしていて悲しそう。兄にまで見放された妹は、更にかわいそうだった。するとそんな彼女に手を差し伸べたのは紗耶香ちゃん


「ごめんね…気づかなくて…私と友達になってくれない?」


「え?いいの」


「いいよ。私もなかなか友達ができなくって困っているの。周りはあんな状態だから…」


そして、最後にペイペイちゃんが横溝りんなに話をしていた。その話を聞いて顔を赤くしながら、「え?そんな…」とか言いながら最後には


「うん…わかった」


そして、その夜彼女の家のお風呂場で


「うぁああああ!!ち・・・ち〇こが・・・ち〇こが・・・」


パンツをはいて股間を抑え悶えている横溝の姿があったとか…そして、彼は翌日学校を休んだ。


「ところで?ペイペイちゃん、どうやって犯人がわかったの?」


「わたしの力をもってすれば、簡単なことよ」


聞くんじゃなかった。別な意味で彼女の恐ろしさを知ることになったのだった。

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