第15話 「大切な人」


「やったなぁ!!恵!!」


教室に戻った俺を迎え入れてくれた佐久間の最初の言葉だった。というよりクラスメイト全員が祝福をしているような感じだ。しかも、俺の肩をバンバンと容赦なく叩いて来る。


「いたい…いたい…って」


そんな俺を見てガハハと笑い声を上げたのは本田だった。


「めぐみぃ~お前にはだまされたよ」


ニコニコして話をしてきているがその顔は怖いが、俺には何のことだかさっぱりわからない。


「一体何なんだ?」


「お前何も知らないのか?」


「ああ…」


するといつもは話をすることがない女の子がやってきた。


「オメデトー」


「立原君!!やったねえ!!」


「立原君みたいなのが好みだったとは・・・」


何が何やらわからない。なんなんだ、このおめでとうアクションは?一体なんだ?


「なにがだよ」


俺の一言にみんなが不思議そうな顔をしたかとすぐに


「またまた~!!」


「なに照れてんだよ」


「そうよ!!みんな知ってるんだから」


「学校公認よ。なにも照れくても・・」


は?


学校公認ってなに?


俺は、佐久間の首元を掴んで


「どういうことだ?」


「は?めぐみ!!いまさらそんな帯同を取るのか?その言葉をそのままお返ししたいくらいだ。どうやって、お付き合いでするようになったんだ?」


「は?だれが?だれと?」


「恵が水樹さんと」


「は?どういうことだ?」


みんなの視線が俺に集中している。そして、佐久間が口を開いた。


「恵がぼこぼこにされているのを聞いた。水樹さんがその場に駆け付けた」


佐久間の話はこうだ。ぼこぼこにされている俺を見て彼女は叫んだ


「あなたたち!!やめなさい!!」


そして、気を失っている俺を見つけた沙織さんは


「私の大切な人にこんなことするなんて、サイテー!!」


その言葉にファンクラブの連中はガーンとなったとかさらに


「ファンクラブなんて解散して、二度と私の前に現れないで!!」


この話を聞いた俺にニヤニヤとしている佐久間と本田が


「で?話をきかせてもらおうか?」


「で?どうなんだ?この間の振られたのは二人の演技だったのか?」


カチャリと眼鏡を直す佐久間・・・その目は鋭い


「だから・・違うんだって」


「今更隠すことか?水樹さんみんなの前で恵のこと大切な人って宣言したんだぜ」


ばん!!と背中を叩く本田は、ハハハと笑っているがその表情は怖い


そして、クラス中の目と耳が俺に向いているのに気付いた。


「うわ!!」


「どうなんだ?」


皆が俺を取り囲んだ。お腹の痛みもまだ治まっていないのに


「どうなんだ?」


「早く教えてよ」


プレッシャーが半端ない。シャーがアムロから感じたプレッシャーを絶対に凌駕している。


こんな精神的苦痛を味わうなんて、もう駄目だ。


エヴァのシンジくんなら逃げちゃだめだと言うに決まっている。しかし、ここは


宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長だ。「逃げよう!!」


そうだ。逃げるは恥だが役に立つこともあるって、


「艦長!!撤退するのですか?」


「このままでは全滅するだけだ。撤退する!!」


よし・・・逃げよう!!と俺が決心した瞬間、みんなの後ろから沙織さんの声がした。


「私の大切な人をいじめないでよ」



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