番外編 日野君と探検
「気まずい」
テスト勉強を始めようと思ったけど、なんだか空気が重くて始める気にならなかった。
「陽太君がご機嫌ななめなんだもん」
「良君が浮気するから」
「してないだろ」
「それはつまり私のことが……良君はツンデレなんだから」
なんていつもみたいに少しふざけたことを言ってみるけど、日野君は変わらない。
「ごめんね」
「なにが?」
「僕のせいで変になってるんだよね?」
少し意外だった。
日野君は場の空気とかを気にしないと思っていたけど、自分のことに関してなら気にするみたいだ。
「そんなことはないって言えないけど、私は嬉しさの方が強いんだよね」
「日野君の独占欲の強さに?」
「そう。これからは明月君と喋るの気をつけないと」
「そうだよ良君。二人の関係を守る為にも良君は私と早く付き合わないと」
「どういうことだよ」
私と良君が付き合えば氷室さんを取られる心配なんか無くなる。
でも日野君的には良君と氷室さんが仲良く話すことにモヤモヤするんだろうから意味があるのか分からないけど。
「そうだ」
「うわ」
私がいい事を思いついたら良君に「また始まった」みたいな顔をされた。
「日野君。良君のお家探検しよ」
「探検?」
「うん。日野君、良君のお家気になってたでしょ?」
これなら少しは気が紛れるかもしれない。
「行きたいけど、今日はテスト勉強しに来たんだよ?」
「大丈夫だよ。明日もあるし」
「静玖が言うか」
「良君が氷室さんと仲良く話すのが悪いんだからね。私だって表に出さないだけでジェラったんだから」
日野君のように分かりやすくはないけど、私だって良君と氷室さんが話してるのを見て少しジェラシーを感じた。
「という訳で、どう?」
「行こうよ陽太君。影山さん明日は今日の分も頑張るって言ってるし」
「え?」
「そうだな。明日は今日の分も本気で取り組むって言ってるから今日は別にいいか」
(あれぇ?)
なんだか間違えた選択をした気がする。
「ひ、日野君。テスト勉強も大事だから行きたくないならいいんだよ?」
「……行く」
「じゃあ行くか」
いつもなら絶対に認めてくれない良君がとても乗り気だ。
(明日がんばろ)
私はそう決心してみんなと探検に出かけた。
「わぁ」
最初はお池の鯉さんのところに来た。
日野君はこの時点で結構元気になっていた。
しっかり氷室さんと手を繋いでいるけど。
「昔さ、金魚がおっきくなると鯉になるって思わなかった?」
氷室さんが照れ隠しなのかほんとに思ったのか、いきなりそんなことを言う。
「僕はデメキンになると思ってた」
「私も。金魚すくいで一緒に居るのはおっきくなったからだって」
「うん。テレビでしか見た事ないけど」
確かに金魚すくいがあるお祭りは少ないから見た事ないのも分かる。
「明月君は」
氷室さんが少し怒ったように良君に聞く。
「気持ちは分かるけど俺に当たるなよ。俺は家に鯉が居たのもあって知ってた」
「鯉って言われると恋かと思うよね」
「じゃあ金魚が友達?」
「それならデメキンは好きとかかな?」
私と日野君がそんな話をしてると、氷室さんから拗ねたような視線を向けられる。
(だよねぇ)
「似た者同士だね」
「え?」
「ほんとに」
「なにが?」
反応まで一緒なところも似た者同士だ。
この後も私達は良君のお家を帰る時間になるまで色々探検した。
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