『平和の象徴』/第8回のお題「鳥」

 平和とは鳩である。……そのくらい単純な話だったら楽なのに。

啓発ポスターみたいに白い鳩が四つ葉のクローバーを咥えている、ただクリーンなイメージだけ与える象徴に……なんの意味があるのだろうか。


 平日の昼下がりの公園のベンチで足元をうろつく鳩を眺める人に、クリアな瞳の人は少ない。どこか淀んだ、空虚を抱えた目をしている。

コンビニおにぎりを頬張る年齢不詳の女性。ちっとも情報が頭に入っていなさそうな新聞を「眺める」おじさん。

もちろん、積極的に鳩に構う幼児と母親や、餌やりおばさんは除外する。


 だけど、今ここでテロが起こると危機感を持っている人はいない。

「平和だなぁ」

希望と合致しない求人票を二枚手にした俺が呟く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る