『待ち人』/第5回のお題「待つ」

「楽しみな気持ちが増すから、待つのは苦じゃないわ。好きな人限定だけどね」

 のんきにそんなことを言っていたあの頃が懐かしい。

 待ち合わせは、待っていれば必ず私のところへ来てくれるとわかっていたから、余裕でいられたんだ。

「いつ来てくれるかわからない人を待つ」つらさが今は身に染みる。


 初詣も合格祈願も、神社で手を合わせるのは形式的なものだった。

全ては自分の努力次第で、願いは叶えられると信じていたから。

自分だけではどうにもできないことがあると辛酸をなめた、人生で初めての挫折。

 戌の日の存在なんて頭になかったから……。

 幸せそうな妊婦に囲まれながら、すがるような想いで神様に手を合わせている。

「授けてください」

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