第65話 恋人を実家にお招きしたいのなんて、海外では普通ですよ?
そして、その後も問題を出し続けたが…二人とも一進一退で、俺が教えていないようなことまで当然のように知られている。
「…そろそろ終わりでいいんじゃ無いか?今回は同点っていうことにして、また次回リベンジっていう形でも良いと思うんだ」
「ダメです」
「ダメに決まってるでしょ」
だからそんなところで息を合わせるのであればもっと別のところで息を合わせて欲しい。
「望宮さん、問題の難易度を上げてください、今のところ簡単すぎます」
「簡単すぎるって…むしろアリスたちが知りすぎなんじゃないか?」
「関係ありません、私たちが絶対に答えられないような問題を希望します」
「…良いのか?」
「っていうか、最初からそんぐらいでよかったんだけど」
俺はこの二人が絶対に答えられない問題を出すことに決めた。
今までのものは想像すれば頑張れが答えられた問題だったが、今回は違う。
「俺のスマホの暗証番号は何だと思う?」
「イチゼロイチゼロです」
…え?即答…?しかも正解してる!?
「どうして知ってるんだ!?というかこの問題に関しては正解したらいけない問題じゃ無いのか!?」
「簡単です…が、ソフィア、この問題で決着を付けましょう、どうして私が望宮さんの暗証番号を見破れたのかを当てることができれば、あなたの勝利です」
「…良いんだ?後で負けてから言い訳しないでね」
「はい」
ソフィアはその直後に口を開き、即答した。
「望宮の誕生日でしょ」
アリスはそのソフィアの回答を聞くと、ゆっくりと目を閉じて、口角を少し上げて言った。
「違います、そうですよね?望宮さん」
「…あぁ、違う」
「はぁ!?」
確かにスマホの暗証番号で四桁の数字と言われれば誕生日というのは想像できるが、暗証番号の設定においてそんな王道を選ぶ理由はどこにもない。
「私の勝ちですね、ソフィア」
「まだ負けてないし!アリスがもし正解できなかったら引き分けだから、引き分け!」
「仕方ありません…私が答えを教えて差し上げましょう、答えは────望宮さんのお名前です」
「…はぁ?望宮の名前〜?」
ソフィアは全く意味がわからないという目でアリスのことを見ている。
「全く…望宮さんのお名前すら知らないとは、話になりません、望宮さんの下のお名前は
今更名前を知られるというのも何だか恥ずかしい気持ちになるが、別に何も恥ずかしがることじゃないか。
「望宮、時人…あっ!じゃあもしかして望宮のスマホの暗証番号がイチゼロイチゼロなのって!」
「そうです、日本語では数字の十のことをと、とも呼ぶことがあります」
「どうしてアリスがそんなにも的確に説明できてるんだ!それに、どうしてあんなにも確信を持って即答することができたんだ!?まさか俺のスマホを────」
「望宮さんに私以外の女性の影が見えれば遠慮なくスマホを見させていただきますが、今のところはそのようなことがありませんので…いえ、もちろんそのようなことになる前に私が阻止させていただきま────という話は置いておくとして、とにかく私は望宮さんのスマホを覗き見るようなことはしていません」
…アリスは小さな声で何かを呟いていたが、とにかく俺のスマホを覗き見たりはしていないらしい。
「だったら、どうしてだ?」
「決まってるじゃありませんか…私は望宮さんのことを全てわかっているからです、あなたの好きなものも、あなたの喜ぶことも、その全てを理解しているのが私という人間────」
「はいはい、とにかく今回の勝負は私の負けね」
「────は、ではなく、も、ですよ」
アリスが小さいことではあると思うがそれでもしっかりと修正した。
「そんなのどっちでも良いから!…それで、私に何か一つ命令できるけど、何を命令するの?」
「今はまだ命令する気はありません…それと、望宮さん」
「ん?」
「今度のお休み、良ければ海外…私の本当の実家へ行きませんか?」
海外にあるアリスの実家…!?
それってつまり…
「次の休みで、俺は人生で初めての海外渡航をするってことか?」
「やはり!望宮さんは海外へ行ったことは無いんですね!でしたら是非望宮さんの海外に感動するところを見るためにも、絶対に私の実家に来ていただきます!」
「…わかった、楽しみに────」
「待って望宮、アリスの実家は────」
「恋人を実家にお招きしたいのなんて、海外では普通ですよ?」
「…そうだけど、どうなっても知らないからね」
ソフィアは意味深な言葉を残すと、俺の部屋から出て行った。
…よくわからないが、とにかく俺は急遽、次の休日に海外にあるアリスの実家へ行くこととなった。
人生で初めての海外、それもアリスと。
「楽しみだ」
「っ…!私もです!望宮さん!」
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