第42話 生涯を求めるのなんて、海外では普通ですよ?

 アリスが俺のことを連れてきたのは、いつかもアリスと一緒に来た保健室だった…保健室?


「アリス?保健室で何をするんだ?」


「……」


 アリスは俺の問いに答えずに保健室の中に入った。

 …が。


「ん、体調不良?」


 保健室の先生が保健室に入ってきた俺たちにそう問いかけた。

 この前保健室に人が居なかったのは、おそらく授業中に学校案内という特別な時間帯で、保健室の先生もたまたま保健室に居なかったからだが、もちろん休み時間には保健室の先生は居る。

 アリスが保健室で何をしたいのかはわからないが、保健室に先生が居る限り特に何もすることはできないだろう。


「はい、少し体調が悪いようなので、この休み時間の間だけ保健室をお借りいたします」


「え…?」


 アリスは全く表情を変化させることなく、平気で嘘をついた。


「はーい、誰もベッド使ってないから自由に使って良いですよ」


「ありがとうございます」


 アリスは俺のことをそのベッドに連れていくと、ベッド周りのカーテンを閉めて、このベッドの上と周りとを遮断するとベッドに座り、俺に隣に座るよう促してきた。

 俺はとりあえずその合図通りアリスの隣に座ると、思いのままに口を開いた。


「アリス!あんな嘘までついてどういうつもり────」


「望宮さん」


 アリスは俺の名前を呼ぶと同時に、俺の口に人差し指を当てた。


「あまり大きな声を出すと、保健室の先生に聞こえて失礼ですよ」


「そ、それは…わかった、じゃあ小声で話すが、どうしてあんな嘘をついてまで俺のことをこのベッドに連れてきたんだ?」


「…ソフィアが望宮さんの腕を組むところを見て、私は今までに無いほど胸に痛みを感じました、理由はもちろん私以外の女性と望宮さんが腕を組んでいるということが嫌だったということも大きいですが、何より私すらまだ望宮さんと腕を組んだことがないのに、その初めてをあのように簡単に奪われるとは思っていなかったからです」


 アリスは悔しそうな顔で心境を話した。


「…ですから、私はもっと大きな望宮さんの初めてをいただくことにしました」


「もっと…大きな?」


「ですがその前に、私は望宮さんに再度言わないといけないことがあります…それを聞いていただいても良いですか?」


 俺は小さく頷いた。

 何度か言われていることだし、次にアリスが何を言うのかは大体予想がついた。


「望宮さん、愛しています、私と生涯を添い遂げてください」


「…え、生涯!?」


「はい、告白の際に生涯を求めるのなんて、?」


 自意識過剰なのはわかっているが、今までアリスと関わってきた経験上今一度告白されることはなんとなくわかっていた…だが、生涯?

 …告白を受けるってなったら生涯を前提にっていうのが一番あるべき形だとは思うが。


「望宮さん…今度こそ、お答えをいただきます」

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