その37。入学と主人公
「———じゃあ話はこれくらいにして……新入生の皆様、入学おめでとうございます!!」
学園の生徒会長———ヘンリー・ヴォイスが礼をして下段する。
「……話が長いわ。私なら30秒以内に終わらせるのに」
「……そんなこと言ってはいけませんよ……まぁ私も同意見ですけど」
俺達は生徒会長の1時間以上の生徒代表挨拶を終えて、そんなことを話し合う。
いや、俺達だけでなく、他の生徒達も口々に生徒会長の話が長いと言う話をしていた。
やっぱり1時間は流石に長いよなぁ。
まぁ俺は途中から横でイライライライラいているシンシア様がいつ爆発するか肝を冷やしながら聞いていたのでほぼ全ての話を聞いていなかったが。
しかし、どうやらこの前の俺の説教が聞いたのか、俺だけが分かる程度にはイライラしていたが、殆ど表には出さず、凛とした表情で聞いていた。
ほとんど聞き流しているとは思うけど。
「———次は、新入生代表———アリアさん」
「はいっ!」
最前列の1番隅の方にいた1人の女子生徒が少し緊張気味に返事をして立ち上がった。
そしてそれと同時に俺の体に一気に緊張感が広がる。
そう———何を隠そう彼女がこの世界の主人公なのだから。
ついでに言えば俺とシンシア様を破滅させる元凶みたいな奴である。
見た目はピンク色の髪と言うこの世界でも物凄く目立つ髪に整った顔立ちは、シンシア様と違って可愛いというか庇護欲を唆る感じの容姿だった。
そして身長も小さい。
もう外見からシンシア様とは反りが合いそうにない。
実際横にいるシンシア様を見ると……
「……頑張りなさい。どうかあの男の心を掴むのよ……!」
何を言っているのかは残念ながら聞き取れなかったが———なぜか物凄く期待の眼差しを向けていた。
…………あるぇ?
俺は予想していたシンシア様の反応と180度違う反応に頭の中が『??』まみれになる。
確かに女神はシンシア様は初っ端から王子とかその他の攻略者達イケメンに見惚れるアリアが嫌いって言っていた気が……。
あとシンシア様は新入生代表を狙っていて、2位だったから余計嫌いって……そう言えばシンシア様って順位何位だったんだろ。
まぁ兎に角アリアは、何か難しい言葉をスラスラと言いながらも、色んなイケメンの所で1度視線を止めている。
まぁ俺も言われていなければ気付かないので、シンシア様は相当見ているのだろう。
———と思っていたんだけどなぁ??
どう考えてもどう見てもシンシア様はアリアに期待の眼差しを向けているんだよなぁ?
なんか清々するとか思ってそうな顔してるもん。
「し、シンシア様……?」
「? どうしたの? もしかして抜け出す?」
少し嬉しそうな表情でとんでもなく非常識なことを言うシンシア様に、俺は速攻で訂正する。
「いえ抜け出しません。ただ……あのアリアって言う生徒の事……何か思いませんか?」
「何か? 特には……何なら頑張ってあのクソ王子を落としてくれれば……あ、セーヤはあの女に見惚れるのは許さないわよ」
「見惚れませんよ。シンシア様の方が断然綺麗なのですから……ただ平民が代表というので気になっただけです。こう言うのはシンシア様が1位なりたそうなので」
「…………私もそんなに負けず嫌いじゃないわよ」
そんな馬鹿な。
貴女、散々俺に張り合って勝てるまでやろうなんて言って当主様に怒られてたじゃないですか。
俺は物凄く遺憾に思うも、取り敢えずアリアに負の感情を抱いていないと分かったので、ホッと安堵のため息を吐いた。
「私の方が断然綺麗……ふふっ、分かっているじゃない」
そう上から目線で言っているものの、シンシアの顔も心も喜びで染まっていた。
口元がニマニマしているのを気付いていないほどに。
シンシアは胸の前でギュッと手を握ると、チラッとセーヤを見る。
成長してより男っぽく、カッコ良くなった自慢の執事に聞こえないように小さく呟いた。
「……私は順位なんて興味ないの。ただ……セーヤと同じならそれでいいのよ」
そう言って嬉しそうに笑みを浮かべるシンシアのポケットには———
1位 アリア 実技100 筆記100
2位 レオンハルト・フォン・ドラグーン
実技95 筆記100
3位 シンシア・フォン・シルフレア
実技150 筆記30(難解すぎて採点不能)
4位 セーヤ・フロント
実技145 筆記30(難解すぎて採点不能)
仲良く隣り合う2人の名前があった。
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新作上げました。
今回は異世界ファンタジーで、推しのために力を振るう主人公の話です。
是非見てみてください!
『精霊学園の隠れ神霊契約者〜鬱ゲーの隠れ最強キャラに転生したので、推しを護る為に力を隠して学園へ潜り込む〜』
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