その28。「シンシアは黙って俺の側にいろ!!」
「———バン」
俺がそう口にすると画面の中の襲撃者がまた1人死んでいく。
既に射撃を開始して数分が経ち、もう数十人も倒しているが、一向に数が減らない。
「———もうっ! 焦ったいわね! 一気にドカンと殲滅したいわ!」
いやしてんだわシンシア様。
俺も頑張ったけど何発か当主様が設置した地雷も爆発してんだわ。
でもそれでも一向に減らないんだわ。
「……それにしても数が多いですね……」
俺はそろそろ腕が疲れたから下ろしたいんだが……。
そんな事を思ったのが行けなかったのだろうか。
俺の射撃が外れ、1人の男が一気に3つの地雷を踏み抜きやがった。
ドカンッドカンッドカンッ!!
爆煙で画面が真っ暗になった。
そして爆発で魔法陣が壊れたのかそもそも画面自体消えてしまった。
「チッ……マズいな……」
これで庭の敵に手を出せなくなってしまった。
魔力感知も切れたので、敵がどうなっているのかと言う状況すら分からない。
この状態で俺が取らないといけない行動は———
「シンシア様、これから襲撃者が来ます。決して僕から離れないでください」
「……私よりお父様を優先させないと……」
「いえ、僕は当主様から如何なる時でもシンシアをお護りする様にと御命令を受けております」
「で、でも———」
———パリンッッ!!
シンシア様が何か言おうとした瞬間、窓を割って複数人の顔を隠した襲撃者が侵入して来た。
「【水牢】ッッ!!」
俺は咄嗟に部屋の半分を水で囲み、襲撃者を溺死させようとするが、その前に何者かの炎魔法で打ち消されてしまった。
その内に他の襲撃者が俺達に接近してシンシア様を殺そうと短剣を突き出す。
「———ッ! させません!!」
俺はシンシア様を引き寄せ、小さい体格を生かして下半身に体当たりをし、相手を吹き飛ばす。
続けて接近していた者もローキックで足をぶっ壊してから顔面に拳を入れる。
「ガハッ!?」
「コイツ只者じゃ———グハッ!!」
「簡単には我が主人は殺させませんよ」
俺は敵にニヤッと意識して笑みを浮かべて相手を牽制する。
すると先程俺の魔法を打ち消した男が前に出て来て俺を見下ろす。
そこで俺はコイツが前回穴の中で話していた『黒鉄傭兵団』の男だと気付いた。
「貴様が我が仲間を殺した子供か……なるほど、確かに子供にしては相当な強さだな。俺と互角の力を持っている」
「……突然何ですか? 感謝でもしてほしいのですか?」
俺は睨みを聞かせながら皮肉を言うと、男は獰猛に笑みを浮かべる。
「ツンツンした小僧だな。普通に褒めているんだ。俺だけならこの作戦は失敗していただろう」
……要はこの作戦は失敗しないと。
「だが今の俺には沢山の部下がいる。小僧の相手を俺がしていれば部下がそのガキを殺すだろう。小僧が部下の相手をすれば、俺がガキを殺せる。つまり———お前は詰みだ」
そう言うと、男とその周りにいた襲撃者が武器を構え、魔法を唱える。
俺は冷や汗をかきながらも、自分の背中で少し震えているシンシア様をチラッと見る。
幾ら性格が悪かろうがまだ子供だ。
性格は俺が頑張ればどうにかなるかもしれないが、命が無くなればそんな事もできなくなる。
と言うかその時は当主様に殺されるだろう。
死に戻りは出来るが、公爵家とならば何されるか分からない。
それは絶対に嫌だ。
「……シンシア様、決して離れないでくださいよ……」
「何を言っているの!? セーヤはとっとと逃げなさい! こんな奴ら私1人で十分よ!」
シンシア様が痩せ我慢をして俺に言ってくる。
「ダメです。僕が逃げれば当主様に殺されてしまいます」
「わ、私は死なないから大丈夫よ! いいから逃げなさい!」
だからまだアンタが相手出来る相手じゃねぇんだよ。
間違いなく1人だと死ぬのはシンシア様だ。
「無理です。いいから僕の後ろに居てください」
「だから———」
…………いい加減五月蝿いな。
「———いいからシンシアは黙って俺の側に居ろッッ!!」
「!?!?」
「分かったか!?」
「は、はいっ!」
俺が初めて敬語ではない口調で言ったことに驚いたのか、シンシア様は目を見開いて驚愕しており、意外と素直に頷いた。
「よし、それでは離れないでくださいよ」
「う、うん……分かったわ……」
シンシア様はきゅっと俺の服を握る。
……さぁやってやる。
「———纏めてかかって来い。全員———灰にしてやる」
———【炎竜王の衣】。
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