その26。「待っておく方は気が気じゃないよね」
俺はそのまま当主様の部屋を出ると、誰にもバレない様に『隠れマント』を装着して再び穴のあった庭に向かう。
まだ当主様にしか伝えていないし、自分でも痕跡が残らない様に丁寧に直しておいたので、まだ誰にも俺が入ったとは悟られていないはずだ。
俺は穴を中心にする様に四方に自分の魔力を込めた魔法陣を設置する。
この世界では魔法陣は『魔法ペン』とか言う魔導具を使って描く。
正直結構高かったが、もしこれでこの家が無くなるとなれば、俺が家に帰るのが遅くなる恐れがあるのでこの家には無事でいてもらわなければならない。
「……えっと……これで大丈夫か……?」
今回魔法陣に付与した効果は3つ。
映像化、魔力感知、極点特化型攻撃魔法だ。
俺は襲撃時は基本的にシンシア様の部屋にいるため、状況が見えない。
そのため、部屋でも見れる様に一先ず映像化と言うものを付与した。
そして極点特化型攻撃魔法は、相手を指定してから僅か数ミリほどのビームを撃ち出す。
そのビームは何かに当たると半径30センチ程を消し飛ばす威力を持っている。
これはレベル90くらいまでの相手なら十分殺せるほどで、俺が自分で開発した。
まぁフレイアに手伝ってもらったが。
ふっ、これで爆弾を使う前に爆破で安全且つ安心に殺せるぜ。
「さて、これで大丈夫かな……?」
自分が此処に来れない以上、これ以上何かをすることは難しい。
フレイアは誰にも秘密だし、そもそも今俺たちの下にいない。
現在ふらっと何処かに行ってしまった。
なんか旧友に会ってくるとか言っていた様な気がする。
こう言う事で、俺はシンシア様の所に絶対に居なければならないのだ。
「あとは相手が来るのを待つだけだな」
俺は再び誰にもバレない様にこっそりとその場を後にした。
その日の夜。
俺は予定通りシンシア様の部屋にやって来ていた。
しかしいつもとは違い、今日は部屋の中に入っている。
「———どう言うことよ! 私が部屋から出たらダメって!」
「当主様からの直々のご命令ですので僕では逆らえません」
「セーヤは私の執事でしょ! 何とかしてよ!」
「シンシア様の執事の前に当主様に雇われていますので」
「むぅぅぅ……」
俺がシンシア様に今日は部屋から出ないでください、と伝えると案の定思いっ切り反対された。
しかし今回はシンシア様の我儘に付き合えるほど余裕はないのだ。
フレイアがいないため、俺では勝てない相手が来るかもしれない。
その時はどうにかしてシンシア様と逃げろと当主様に言われている。
シンシア様が頬をこれでもかと膨らまして不満げに漏らす。
「…………セーヤのケチ……」
「何と言われようと出させません」
俺が頑なに頷かない事に、シンシア様は諦めたのか大きくため息を吐いた。
依然として不満げな表情をしているが。
「……そもそもこれから何があるの? 誰も教えてくれないの」
そう言ってしょんぼりと肩を落として落ち込むシンシア様には申し訳ないが、俺も言うわけにはいかない。
今知り合いの人間の死体を見ればシンシア様のトラウマになってしまうかもしれないからな。
俺は噛み付いてくるシンシア様を相手しながら、そろそろ始まるであろう戦いを見守る事にした。
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