その13。「襲撃と言えば夜だよね」
俺達は急いで家に帰ると、早速セイドに黒幕について訊いてみた。
俺の頭の上には小さくなったフレイヤがおり、シンシア様は俺の横にいる。
始めは俺1人で訊こうと思ったのだが、
「私が襲われたんだから私も聞くわ!」
と言われたので連れて来た。
そもそも俺には命令されたら絶対に逆らえないのだが。
セイドも俺よりも地位的には下なので、残念ながらシンシア様を止めれるものは誰もいなかった。
「それで私を襲った不届者は誰なの!?」
「……シンシア様は『黒鉄傭兵団』と言う者達を知っていますか?」
「「……?」」
シンシア様も俺も全く知らなかったので、思わず首を傾げる。
女神もそんな奴の話はしてなかったから大した者達でもないんだろう、多分。
「誰なの、その『黒鉄傭兵団』って」
俺がセイドに訊いてみると、セイドは若干顔を歪めて話し出した。
「『黒鉄傭兵団』は最近現れた
「へぇ~初めて知ったなぁ……」
ってことは誰かがシンシア様を殺す様に依頼したってことか。
でももしそうなら何故俺の家に帰ったのだろう。
「何で公爵家に戻らなかったの? 公爵家の方が安全だよ?」
「嫌よ! 私は家には戻らないわ!」
どうやらシンシア様は帰りたくない様だ。
自分の命が危ないと言うのに……悪役令嬢と言うのは怖いもの知らずなのか?
「戻れませんよ。既に公爵家へと戻る道には罠が仕掛けてある可能性がありましたので」
「それなら俺の家の道にも……」
「公爵家よりも子爵家の方が狙い易いので、おそらく誘導されたのでしょう」
まぁ公爵家とは警備もセキュリティーも比べものにならないだろうな。
襲うなら
「ですが、既に通信魔道具で公爵家には連絡済みです。後はあちらで対処してくれるでしょう」
セイドはそう言うと、パッと顔を明るくして、シンシア様に「お風呂にでも入られては如何ですか?」と提案していた。
「……対処してくれる、ね……」
俺は少し考えたいことがあったので、シンシア様をセイドに預けて自室に戻った。
———皆が寝静まった真夜中。
俺はそっと起き上がり、静かにフレイヤを起こす。
「フレイヤ、起きて……」
『…………何だ主……今は寝る時間だろう?』
「ごめんけど、少しの間シンシア様を守っていて欲しいんだ」
『……分かった』
フレイヤはそう言うと、ふらふらと飛びながら部屋を出ていった。
若干不安になったものの、まぁ俺の何十倍も強いので大丈夫だろう。
「僕は僕のやるべき事をこなそう」
俺はそっと部屋を後にした。
———フロント家庭園。
木の上に黒装束を身に纏った数人の男が潜んでいた。
彼らは『黒鉄傭兵団』の中でも特に暗殺に特化した者達である。
「……わざわざ我らがやらねばならないのか?」
1人の男が面倒くさそうに言うと、リーダー格の男がため息を吐く。
「それは俺も思っているが、昼に失敗したのは事実。彼らも決して弱いわけではなかった。今回の依頼人は物凄い金を積んでいるそうだ。何としても成功させろとボスに言われている」
「はぁ……面倒だなぁ……」
「———なら最初から来ないでよ」
突然聴こえた子供の声に男達は一斉に戦闘体勢に入り、声の聞こえた方を振り向くと、木の下に此方を見ている1人の男の子がいた。
男の子の漆黒の瞳が男達を射抜く。
その瞬間に男達は蛇に睨まれた蛙の様に体が震え上がった。
「な、何だ……これは……」
「あのガキがやっているのか……?」
「そんなことはどうでもいい! 退避だ! 諦めるぞ!」
リーダー格の男はいち早く撤退の命を下した。
それも同時に全員がバラバラに散る。
リーダー格の男も一目散に逃げ出そうとするが———
「———逃がさないよ」
「———ッ!?」
男の子の声が聞こえたと思った瞬間に不思議な浮遊感が男を襲った。
「………………え……?」
男の目には、首から上が無くなった自身の体と、漆黒の髪を靡かせ、此方を無機質だが深淵の様な暗い目で見ている男の子が映った。
それと同時に理解する。
昼に仲間を殺したのはこの幼い子供であると。
自分達は眠る獅子を起こしたのだと。
「うーん、意外と弱いなぁ……まぁいっか。次行こ次」
それが男が生涯で聞いた最後の言葉であった。
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