The ANTHEM - Interlude
十卜或斗
とある█▄▀▃の独白
この世界は、粒で出来ている。
かつて、アインシュタインは一つの世界を作り上げた。
いや……かつて”世界だったもの”の
量子力学と呼ばれたそれは、我々の世界を象る基盤でありながら今なお謎に包まれている。その原理、その定理、その条理。
闇に包まれた過程は、しかし裏側の世界。叛逆の帳の内側であれば。
◆
歴史は、可能性を殺し続ける。
それは単に資料に模られた歴史だけを意味せず、思慮に紡がれた個人史も然りだ。
人は、或いは全ての存在は、常に選択を行っている。
意識的に、無意識的に。
その選択の道程は、節の数ほどに分かたれ続け、指数関数的に未来の可能性が広がり続ける。選択の枝だ。
ある一点にて交わった枝同士は、その規模に応じて果実を生む。
可能性の交差する世界。
そうして、歴史は無限に広がり、無限に分かたれ、無限を征く可能性の海と化す。
果たして、実に。
そんなご馳走を、彼らは見逃すはずなども無いだろう。
あの、背信の名を与えられた超常。
レネゲイド・ウィルスが。
◆
世界は粒だ。同時に波だ。
量子と呼ばれる世界の
そして、何をも知らねば波として流れ続ける。可能性の海の中を。
であるからして、我々が歴史と呼んだその営みも、可能性の海を揺蕩う波のまにまに流れ行く。流れ、流れ、
だが、考えても見て欲しい。
もし、この世の全てが
故に我らは思い知る。自身の視界を。その狭さを。その先の行き止まりを。
かの愚者は、世界全てを
かの外来種は、世界そのものに眼を宿そうと試みた。
かの博士は、世界を超えるために根源的な可能性を追い求めた。
けれど、あらゆるそれらの試みは、世界の
あり得なかった可能性。成就しなかった世界線。
歴史は自ら自身を定義し、最も揺るぎない可能性が交差する地点を定礎として幹を伸ばし続けている。
世界が波であるからして、波の性質を知っているだろうか。
逆位相の波と打ち消し合う。その性質を。
世界は、波だ。可能性の波だ。
故に、逆位相の世界そのものと干渉した時、その世界はカタチを失い、
そうして世界は無限の広がりを失い、有限の幹の周囲でのみ存続を許される。
基本となる
世界を支える定礎の繋がり、巨大な可能性の樹は、今もなお可能性に広がり、可能性を切り落とし続けている。
未来永劫、終わることのないこの営みを、人類は
私たちはこう呼んだ。
――
◆
だから、キミが現れた時、私は心底驚いたんだ。
存在してはならないキミが、確かに存在し続けている事に。
いつ、
ねぇ、大賀美 ▉▀▄▀。ドグマの子。
キミの
これから虚数空間へ捨てられる老人への、せめてもの手向けだと思ってさ
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