未定
戌李 天音
第1話 きっと誰かの
僕はなぜここにいるのだろう。
見たことのない世界、見たことない種族。気づいた時には僕は知らない世界にいた。
よく見ると僕以外にも何人か同じ境遇がいるようだ。
そう考えていると、
「やぁやぁ、君たちが今回の召喚者だね?遠い世界からはるばるよく来てくれたね!」
そう軽快にしゃべる中性的な人物。その恰好はおとぎ話の国王様みたいな恰好をしていた。本当にこんな格好する人っているんだな。そう思っていると隣にいる僕よりも少し大きめな少年が
「やぁやぁ、じゃねぇ!何様だてめぇ!それにここはどこなんだよ!」
とここにいる誰しもが疑問に思うことをその国王様みたいな人に怒号と共に浴びせた。よくある異世界物のテンプレートだな。と思いこみあげてくる笑いを必死に我慢しながら、顔をしかめる。
「おもしろいねぇ、君。そうだね、何から説明しようか?うん、私のことから説明しようか。私の名前は”クイナ・アルカーデ”この国の次期国王さ!」
ここまでくると、本当に小説の中に来たみたいだ。と次の展開の予想をしていると、
「君たちにはこれから3か月間宮廷師団の各隊長格と共に過ごし、この世界での知識と生きるすべを身に着けてもらう。」
「話に割り込んですまないが、私たちがなぜ来たのか、元の場所に帰れるのか。それをまずに説明いただきたい。」
そう国王の会話に割り込んだのは、僕のいた世界では珍しい赤と白のグラデーションのきれいな髪をした美少女だ。その少女のしゃべる姿はその姿のようにかわいらしいものではなく、とても凛々しくかっこいいものだった。僕はその姿にその異質な場面なのに、彼女にどうしようもなく見とれていた。
そうしてぼうっとしていると、少女の質問に答えるかのように国王が
「君たちを呼び出したのは、今この国が危機に瀕しているからだ。この国は今300年に一度の厄災と言われる”魔聖戦争”の戦火に巻き込まれている。国の周辺には聖域より生まれた混獣と、それに加え魔国領土の兵魔獣がはびっこている。その影響か、国の周囲は荒れ果てとても生き物が住める状態ではない。」
「それならば先程名前の出た宮廷師団とやらに任せればいいものを、なぜ私たちにそのようなことを?」
「それは、師団の隊長たち以外はほとんどがその混獣と兵魔獣によって亡き者に慣れたからだ。そこで古い伝承にあった”異界人はこの世界に渡る際に、神族の加護が得られる”と記されており、これならば国民を救えると確信したからだね。」
どうやら魔王討伐!とかそういう感じではないらしい。下手したら僕らだって死ぬかもしれない。つまり国王の言っていることは「兵士になれ」ということらしい。好き好んで兵士になるものはいないだろうが、国王がその後、元の世界に帰る方法は今のところない。ということを深々と謝罪しながら告げた。
国王は生活に関しての不便はさせないと約束はしてくれた。それで王への実質な謁見は終わり、僕たちはそれぞれ国王が決めた各師団の団長の部屋に案内された。
これからどうなるかはまだ分からない。もしかしたら死ぬかもしれない。そんな不安を抱きながら僕は床についた。
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