第6話

 就職してから数年後の3.11の日、今でも忘れない、あの恐怖は、僕はミニコミ誌の配達で隣町に車で向かっていた。隣町との境には長さ200メートルくらいの橋がある。僕の車は橋の真ん中に差し掛かろうとしていた。その時車が突然跳ねた、ハンドルが空転するような軽さになりまったく制御が利かなくなった。ただただ車が跳ねトランポリンの上にいるようだった。僕は、橋が落ち、川の中に落ちるのを覚悟した。水の中に落ちるのを意識して車の窓を全開にした。正しいかどうかわからなかったが本能的に逃げ道を作った。僕は覚悟して必死にハンドルを握っていた。

どれくらいの時間が経っただろうか。1分もたたないだろうが恐ろしく長い時間に感じた。揺れが収まったので、僕はすかさず車を走らせた。一般道に出て車を止めるとラジオのスイッチを入れた、アナウンサーの声がけたたましく響いた。巨大地震が起こったことを伝えている、僕は運よく無傷でいられたが、急に家族の事が心配になり家に電話を掛けた、ツーという音とともに全くつながらなかった。僕は車をUターンさせると急いで家に向かった。途中の景色は見たことのない景色だった、あちこちで塀が倒れ、屋根の瓦もずり落ちていた。僕は家が急に心配になりアクセルに力が入った。

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