見ざる聞かざる言わざる

小深純平

第1話

10年ぶりだ、相変わらずきれいに咲いている。ここは北関東のQ市の梅林公園である。

 今日、ぼくはミニコミ誌の取材で開花具合を見に来た。今、僕はQ市の印刷会社でミニコミ誌発行の担当をしている。ほとんどが広告中心の小冊子であるが数ページは地域の情報を載せていろどりを添えている。

サッカーコート5面くらいはある公園は北側が山の斜面になっている。確か山の斜面の右の道を入っていくと山あいが開けて直径100メートルくらいのため池と、傍には龍神神社があるはずだった。

僕はなつかしさと好奇心も手伝って久しぶりに足を運んでみた。10分くらい歩くとやがてそれは現れた。水深2m位のため池は透明で底まで見えた。底には丸い緑色の藻が群生してマリモを思わせた。初めて来たときにはマリモだと思った。友人にそのことを話したら笑われたが、後に、それはまんざら的外れでもないことが分かった。またよく目を凝らすとたくさんの魚が回遊しているのが見える。しかしここは禁猟区である。つまり龍神様の魚なのだ、取ると罰が当たるということだった。

 山裾の田が水不足で困っていた時、ここにため池を作ったら、ため池の水は瞬く間に満杯になったということだった。村人はお礼にたくさんの魚を放流し傍に龍神神社を祀ったということだった。僕は歩きながらいろいろな記憶が蘇ってきた。特に同級生の芳夫とはよくこの辺の山々を駆け巡ったものだった。その芳夫も亡くなってしまい、その後大地震が起きたり、僕にも僕の家族にもさまざまなことがあった。

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