第3話 小説家

 放課後の文芸部。対面のイスに座っている友人が俺のweb小説を読み終わると、手を顎に当てた。この動作をするということは、俺にかける言葉を悩んでいるのだろう。面白い話を読めば、すぐに反応してくれるので分かりやすい。


「素直でいいんだぞ」

「なら言わせてもらうが、しょうもない」


 言葉の矢が俺に突き刺さる。が、そんなの慣れっこだ。すぐに引き抜いて友人の言葉に耳を傾ける。


「これが例えばゲームに転生する系の話ならいいと思う。けど、ただの日常回でこれは読んでいて楽しくない。主人公が楽しむだけの話なら、友達とか追加して会話させた方がよかったかも」

「なるほど」


 言われた内容をメモする。公募で一次が通らない、webでも人気が出ない、本当にただの底辺作家にとって、こんな友人の言葉は何よりも役に立つ。


「まぁ、あくまで僕の意見だから鵜呑みにしないように」


 ここまでがお決まりの流れ。いつも為になる意見をくれるんだから自信を持てばいいのに。


「分かってる。『自分が納得できる批判のみ受け入れろ』だろ?」


 早速メモした内容に書き直すべくパソコンを開ける。今日も今日とて執筆活動。サイトを開いて編集を行う。


「ちなみにお前、テスト勉強始めてるか? そろそろ一週間前だけど」

「……今の俺は筆が乗っているんだ」

「だから? 前回みたいに赤点取ったら夏休みは特別補講行きだね」

「それは困る」


 大人しく起動したばかりのパソコンを閉じて、出された課題を広げる。学生って本当に大変だ。早くテスト終わってくれないだろうか。

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