マリオネット
西影
第1話 勇者
町の人たちの依頼により、俺たちはある洞窟の調査に来ていた。魔法使いが発生させる光球を頼りに進んでいく。足元が覚束ない中、出くわすモンスターを倒していく内に最下層に辿り着いたらしい。
天井に隙間なく生成されたクリスタルが光を吸収して、洞窟全体が明るくなる。そこは一つの大きな地下空間だった。先程までの道のりが嘘のように平らな地面。その最奥に目的のモンスターがいた。奴は俺たちに気付くと、洞窟を震わせるほどの咆哮を発した。
赤い鱗を身に纏う五メートル以上の巨体。悪魔を彷彿とさせる二本の角が生えた恐ろしい貌。その後ろに見える大きな双翼は、種族の象徴のようにバサバサと動いており、口から炎を吹き出す。
これが噂のドラゴン。声をかけなくても全員が戦闘態勢に入っていた。僧侶からバフをもらい、戦士と共にドラゴンとの距離を詰める。ドラゴンの炎をかいくぐり、振り上げた剣で一撃を叩きこんだ。
しかしドラゴンは怯まず、足で踏みつぶそうとしてくる。それを避けると同時に魔法使いが水属性の呪文をドラゴンに打ち込んだ。怯んだドラゴンにすかさず追撃して、一度離れる。これが強敵との基本スタイルだ。この調子でどんどんダメージを蓄積させていく。本来なら一撃で倒したいが、相手が強敵のため慎重に動くしかない。
一撃でも当たれば致命傷。故に、一度の判断ミスが命取りとなる。
俺に炎のブレスが放たれた隙を見て、戦士がドラゴンとの距離を詰めた。狙いはドラゴンの死角となる後ろ脚。そこへ一撃を叩きこもうとして──事故が起きてしまった。
「――ぐはッ」
ドラゴンの尻尾で戦士が吹っ飛び、壁へ叩きつけられる。そこへ魔法使いと僧侶が駆け寄り回復魔法をかけるが、それが決め手だった。
無防備な僧侶にドラゴンが火球を放つ。初めて見る挙動だったため、回避行動が間に合わず二人は地面に倒れた。たった一瞬でメンバーが全員倒れたのだ。
「おおおおお!」
仲間の仇を打つために剣を振るう。相手のモーションに合わせて回避を試みるが、僧侶のバフが消えたことにより間に合わない。呆気なく俺も地面に倒れ、視界を炎が覆った。
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