11話:話に出てくるヒロインが出ないタイプの修羅場

「えっと会長。つかぬことを聞きたいんですけど。どうやって家に入りました?」


梓は思った疑問をわためにぶつけることにした。しかし、わためはできもしない口笛をして誤魔化そうと必死に口をふーふーと鳴っているよ~と言わんばかりに顔を茹蛸のようにしていた。


「会長、いくらなんでも誤魔化しが下手すぎます。」


「なっ!?ひどくない?梓くん!私、仮にも幼馴染ですよ!」


「えっ??」


「えっ??」


わための爆弾に梓は一瞬フリーズしてしまった。


「って、兄さん。この女誰?」


「あっ・・・ちょっ?かなめ!!ステイ!ステイ!!」


「問答無用!!」


梓は視界を再び奪われた。しかも今回は布ではなく、かなめの指によって。


「ぎゃあ~~~目が!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


しかも梓は手錠のせいで痛みに耐えることしかできないという生き地獄を味わうのだった。




 結局梓はかなめにわための誤解を解きながらなんとか手錠を外すことに成功した。


そして、真っ先に冷蔵庫へゴーして目薬を指で潰された眼球にシュートしてきて視力を回復していた。


「それで、会長は何しにきたんですか?」


「ふっふっふっ、それはね・・・梓くんと小さい時にした約束を守りにきたんだよ!」


「約束?そんなのしましたっけ?」


「したよ!大きくなったら結婚するって!!」


「は??兄さん?」


わための爆弾はもう一つ落とされた。しかし、ここで忘れてはいけない彼女は窓からこの家に侵入していることを。そして、梓の幼馴染であるという事を。


「それで、氏家先輩は私の兄さんを盗ろうとしたと。」


「うん、人聞きの悪い言い方ね。私は昔の約束を成し遂げにお義父さんの元にやって来たのよ!!」


「氏家先輩。それは時効なのでは??」


かなめの一言にわための頭に架空の矢がぶっ刺さった。




「ところで梓くんに聞きたいんだけど・・・この女の子は誰かなぁ~?」


「えっ?紗月のことですか?」


「へぇ~紗月ちゃんっていうんだ~。可愛い子だねぇ~。」


梓は首を縦に振ろうとしたが、それを否定させるかのようにわための目は先程のかなめのように目の中で輝く六芒星は綺麗な水色が黒色へ変わり奥底にあったハイライトは失われていた。


「ちょっ??」


「幼馴染に隠し事する梓くんは、いつの間に悪い子になっちゃったのかな~?」


「いやいや、言う必要なくないですか!?」


「問答無用!!ってことで妹ちゃんには悪いけど、梓くん少し借りるね。」


「は?良いって言うと思っているんですか?」


2人の間には電流じみたものが浮かんで見えるくらいガンを飛ばしあっていた。




わためとかなめがガンを飛ばしている中の紗月はと言うと………


「んんっ///梓っ!ダメェ~そこは汚いよ///」


珍しく長く深い眠りについていると思いきや、めちゃくちゃ邪な気持ちを言葉に投影しながら少し気持ち悪い笑みを負浮かべていた。




 一方の梓は二人がやり合ってるのをいいことに部屋を抜け出し、自分の部屋に戻ってベットの上で天井を眺めた。


「はぁ。少し疲れたな。2人は何か険悪っぽいし………。」


小さなため息を一つ吐き出しては手を伸ばして一つ握りこぶしを作った。


「何もないのかな?それとも、まだ残ってるのかな?」


いつもの口調とは違う口調が何処からか生まれてきてしまう。梓は少し疲れたのか意識を遥か彼方に飛ばしたのだった。

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