第二将【玉蜻】





第二将【玉蜻】



















 うしろをふり向く必要はない。

 あなたの前にはいくらでも道があるのだから。             魯迅












 将烈も随分丸くなったな、と物思いにふけっていた斎御司。

 「お前もそろそろ部下が必要だな」

 「部下?いらね」

 「部下はいいぞ。自分1人でままならないことを手伝ってくれるんだ」

 「1人でやっからいい」

 「1人にこだわると痛い目見るぞ」

 「覚悟してらぁ」

 「まずは波幸という人物なんだが」

 「あ?」

 「なんでもお前に憧れているそうでな、真面目そうだぞ。お前にはもったいない。私の部下になってほしいくらいだ」

 「ならそうしろ」

 「生憎もうお前のところに異動願い出していて、それで受理もしたんだ、さっき」

 「初めておっさんに殺意が沸いた」

 「冗談言うな。お前が私に殺意を持ったのはこれが初めてではない」

 「俺、部下、いらない」

 「私、承諾、今日来る」

 「なんなんだよまじで。俺まじで育成とか出来ねえから」

 「お前に育成なんぞ求めておらん。お前はお前のやり方でそのまま仕事をすればいい。あとは出来た部下が勝手に成長する」

 「出来た部下なら俺んとこ寄こすな」

 「あと火鷹という男もいてな」

 「おっさんとりあえず黙らせていいか?」

 「こいつは榮志のいとこらしくてな」

 「榮志のいとこ?なら榮志んとこ行かせろ」

 「それがな、こいつも将さん将さんと五月蠅くてな。異動は少し先になるかもしれないが。あんまり慣れ慣れしいからすでに知り合いかと思ったぞ」

 「俺仕事戻るわ」

 「こら将烈」

 「俺は1人でやってくって決めてんだ。部下なんていらねえ」

 そのまま部屋を出て行ってしまった将烈を他所に、斎御司は波幸、火鷹の2人の異動願いを迷いなく上へと提出した。

 波幸は将烈のいる部署がわからず、適当に探していたようなのだが、それを知った斎御司がすぐさま受理したという。

 その後、将烈から何度か文句は言われたものの、今となっては知っての通り、以心伝心、阿吽の呼吸といったところだろうか。

 しかし、受け入れた理由の一つが、波幸の一度淹れたコーヒーが気に入ったから、というものらしい。

 斎御司の部下でいうと、これだけ長く働いているのは眞戸部くらいのものだ。

 とある潜入捜査前に将烈とは顔見知りではあったが、イメチェンをして潜入捜査に入り、最初将烈も気付かなかったそうだ。

 面倒見が悪いわけでもないのだが、野心などはない斎御司は、部下のことも放任主義だったため、次々と止めていったとか。

 その点、眞戸部は自由にさせてもらえるのが嬉しいこともあり、もとより斎御司や将烈には信頼を寄せているため、今ではすっかり斎御司を父のように慕っているところもある。

 「(美乃、元気にしているか)」

 まだ小さい我が子を思い出している斎御司のもとへ、今一番顔を見たくない相手がやってくる。

 「これはこれは斎御司さん。お久しぶりですね」




 「だめだ。あいつらを追い詰めるようなものが何もねぇ!!!!!」

 「だな。穴がひとっつも見つからねえ」

 「あいつらの不正を見つけるのが無理なら、将さんの正当性を主張するしかねえ!!!」

 「おおお。お前にしては珍しく冴えた考えしてんな。てかそういう言葉知ってたのな」

 「ったりめぇだ!!俺はな!将さんのためなら例え火の中水の中!!!熱湯の中でも白湯の中でも!!!」

 「白湯の中はすでに気持ち良いだろ」

 「で!何すりゃいいんだ?」

 先程までの勢いはどこへやら。

 急に小首を傾げてきた火鷹に、榮志はやっぱり、と呆れる。

 「正当性って言ったって、そう簡単じゃねえぞ。そもそも、こっちが白って言ったところで、上が黒だって言やぁ黒になっちまう。向こうは幾らだって塗りつぶせるんだ」

 「デモ起こすとか」

 「起こすな。お前捕まって終わりだよ」

 「署名活動とか」

 「誰が署名してくれんだ?今や将烈さんは指名手配犯。難しいだろうな」

 「ボランティア活動して良いイメージを作る」

 「お前はどっかの議員でも立候補すんのか?」

 「フリーハグで世界を救う」

 「フリーハグぐらいじゃ世界は救えねえ」

 「なんで」

 「フリーハグで世界が救えたら誰も苦労はしねえ」

 「そういうことか。俺はてっきり、フリーハグすると見せかけて刺されるとかそういうことかと思った」

 「なんでそっちの発想になったんだよ」

 思う様に情報を得られることも出来ず、事を進めることも出来ない火鷹は、もやもやする気持ちを、暴食で鎮めていた。

 家に帰ると1人で目をぱっちり開けたまま寝られないとのことで、榮志の部屋にお邪魔しているそうだが、食事の用意をするのは榮志のため、榮志は大変困っていた。

 一応、食費は収めてくれているそうだが、それでは賄い切れるかわからないほどの食べっぷりだったとか。




 「炉冀さん、1つご提案が」

 「どうした?」

 「データに関しては、健に頼んでみるのはどうですか?健なら復元まで出来ると思うんですけど」

 「んー・・・」

 「ダメですか?」

 「ダメってわけじゃないんだけど、データが復元してることが分かった時点で、健も目を付けられるんじゃないかと思って」

 「あ」

 「健が優秀なのは知っているけど、今健を巻きこむのは懸命じゃないな」

 「そうですね」

 「健も別件で動いてるんだろうし、他何か無いか考えよう」

 落ちついた会話に聞こえるかもしれないが、波幸と炉冀は現在バギーに乗っている。

 どうしても炉冀が出かけたい、波幸に自分のバギーを見せたい、乗ってほしいとのことで、休みの日にこうして炉冀と合流しているのだ。

 炉冀は手慣れた感じでバギーに跨り颯爽と走り出したのは良いが、波幸は初めての為酔いそうになっていた。

 一旦停めてもらい、先程の会話へと繋がる。

 「顔青いぞ」

 「すみません。普段あまり乗り物に乗らないもので」

 「そうなのか。俺これ自家用車にしたいんだけど許可が下りなくてさ」

 「炉冀さんは将烈さんと長い付き合いなんでしたっけ?」

 「長いといえば長いけど、長くないといえば長くない」

 「難しいですね」

 「幼馴染と聞いていましたけど。将烈さんは確か腐れ縁だとか」

 「いや、なんか違うな。そこまで長くはないな」

 「そうなんですか。以前の作者の説明では幼馴染とありましたので、てっきりそうなんだと思っていました」

 「間違いだ。そもそも将烈に幼馴染という類の人間はいないはずだ。俺は聞いてないし知らない。なんで幼馴染ってことになったのかはわからないけど、波幸が将烈と会う半年とか一年前くらいじゃないか?」

 「あ、そんな感じなんですね」

 「あいつとの出会いはな・・・」

 「あ、いいです回想は」

 「いいのか」

 「長くなりそうだったので」

 「簡潔に言う」

 「言いたいんですか」

 「あいつと出会ったのはな、俺が禁煙を始めた日だ」

 「喫煙者だったんですね」

 「俺このまま肺がんになって死ぬのか、と思ったらな、一旦止めてみるのもありかと思ったんだよ。で、禁煙するぞ!って決意表明した日に、あいつが美味そうに煙草吸ってたんだよ・・・」

 「・・・え、それだけですか」

 「あいつさ、ベンチに座りながら両腕をこう・・・背もたれに乗せてさ、空を仰いでたわけ。煙草の煙が空に吸い込まれるように泳いで行ってさ。俺あの時初めて空になりたいって思ったよ。櫺太に頼もうかと思った」

 「櫺太さんに頼んで空になれるんですか」

 「なれるわけないだろ。煙草の煙吸いに行くだけだよ」

 「・・・炉冀さんってそういう方だったんですか。もっと真面目でお堅い感じを想像していたんですけど」

 「あいつそんなこと言ってたのか?」

 「いいえ」

 「言って無いのか」

 「自分を持ってるとか曲がったことが嫌いとか、そんなことは言っていました。信頼出来る上司がいたんだろうな、とかなんとか」

 「ちなみに、その上司のこと教えてやろうか」

 「結構です」

 「なんで」

 「炉冀さん、そんなことより将烈さんの居場所ってわからないんですか」

 「辛辣。さすがだよ」

 微笑んではいるものの、炉冀はその上司のことを話したかったのか、しょんぼりしていた。

 居場所をつきとめようにも、GPSなどつけているはずもないし、波幸たちにそういった操作は出来ない。

 歯痒さを感じながらも、波幸と炉冀はとにかく何か突破口が無いかと探す。




 「あ、きたきた」

 先程まで趣味の機械いじりをしていた紫崎が、何かに気付いてパソコンへと目をやる。

 何をしているんだろうと眞戸部が覗きこむと、そこには数字の羅列が画面いっぱいに出てきていた。

 全く以て何がどうなっているのか分からない眞戸部が紫崎の背中越しにパソコンをじっと見ていると、碧羽が自分の分のコーヒーを飲みながら、眞戸部に別のコーヒーを指し出してきた。

 「紫崎が解析してるから終わったら見ればいい」

 「そっか。ありがとう」

 碧羽は碧羽で何か情報収集をしているらしく、おそらく通常の人間は見ることの出来ないサイトへ入っているんだろう。

 耳にはインカムのようなものをつけてはいるものの、碧羽から話しかけることは一切ないため、音を取り入れているだけなのかもしれない。

 しばらくすると、紫崎が椅子をくるりと反回転させて眞戸部の方を見てくる。

 「斎御司さんからの伝言だ」

 「斎御司さん!?どうやって・・・」

 「実はねぇ」

 そう言ってヌッと出てきたのは柑野で、自分の指についている指輪を眞戸部に見せつけるようにちらちら動かしている。

 眞戸部は柑野を気にせず紫崎に聞けば、柑野が眞戸部と紫崎の間に入ってくる。

 「実はねぇ、斎御司さんに同じような指輪を送っておいたんだよ」

 「指輪を?・・・あ、そういえば、1カ月くらい前にそんな荷物が届いてたな。え?なんで指輪なんか」

 柑野は得意気に人差し指を眞戸部の前に出し、その指を左右に動かす。

 「ちっちっちー!うちの龍ちゃんをあなどっちゃあいけねぇぜ!!」

 江戸っ子のような話し方になった柑野を無視し、眞戸部は早くしろと急かせば、紫崎が説明をする。

 「斎御司さんから依頼があって。最近の上層部、もとい警察自体の動きが不審だって。で、万が一の時に備えて準備してくれって頼まれたんだよ」

 「それが、指輪作成?なんで?」

 「だーからー!!」

 折角紫崎が説明を始めたお陰でスムーズに会話が進むと思っていた眞戸部なのだが、どうしても柑野が言いたいらしい。

 それには紫崎も碧羽も慣れているようで、柑野に好きにさせている。

 「龍ちゃんが作った特注品の指輪でね」

 柑野の話によると、その指輪というのが、振動や汗、もしくは音、指の動きなどでも意思伝達の出来る代物らしい。

 おそらく、斎御司は指輪をつけて仕事にとりかかるフリをしながら、パソコンのキーボードを打って連絡をしてきたのだろう。

 もちろん、本当に打つ必要はなく、キーボードの表面だけをなぞっても認識されるそうだ。

 本人が伝えたいことかどうかは、汗や指の動き、心拍数などから判断してこちらへ送られてくるらしいが、詳細はまったくもって理解できない。

 「で、連絡内容は?」

 「俺達にっていうよりも・・・」

 「へ?」




 「・・・・・・」

 鬧影はキッチンの冷蔵庫のドアを開けた状態で部屋の机に置きっぱなしのイヤーカフを眺めていた。

 気のせいかもしれないが、イヤーカフから声が聞こえたような気がするのだ。

 確かに、鬧影は万が一の時のためにと、斎御司からこのイヤーカフを渡されてはいたのだが、あくまで、情報を記録するための道具としての役割のみだと聞いていたのだ。

 冷蔵庫のドアをそっと閉めると、鬧影はゆっくりと謎の声が聞こえてきたイヤーカフへ近づいて行く。

 『・・えいっ』

 「・・・!?」

 聞き間違いではなかったらしく、鬧影は目を丸くしていた。

 しかし、聞き覚えのある声だと分かると、それを耳に装着する。

 『鬧影!鬧影!聞こえるか!?くそ、だめだ。あの人意外と機械音痴っぽいし、こんなイヤーカフから声が聞こえてきたら多分驚いて腰抜かしてるんだよ』

 「聞こえてるが」

『うわっ!いた!・・・こほん。鬧影さん、斎御司さんからの伝言です』

 「伝言?」

 どうやら、渡されたイヤーカフは電話機能が付いているらしく、鬧影、眞戸部、紫崎と碧羽に柑野と、これを持っている者たちは会話が可能だそうだ。

 それならそうと早く言っておいてほしかった鬧影でもあるが、いざという時の為に斎御司が頼んでおいたのだろう。

 それに、これを付けていれば、警察内部に連絡内容が漏れることもない。

 鬧影は迷いに迷ったものの、そのイヤーカフをつけて出かける。

 「・・・・・・」

 いつもの通り、男たちが鬧影の後ろを付いてくる。

 「・・・まいとくか」




 「桃源くん、久しぶりだね」

 部屋に入ってきた招かれざる客、桃源たち御一行を迎え入れた斎御司は、悠悠と椅子に座りながら足を組む。

 桃源が監視の男たちを手で追い払うと、部屋にはなんとも言えない重苦しい空気が流れる。

 「何か用かね?」

 斎御司の問いかけに、桃源は手を後ろに組みながらにこやかに言う。

 「たった今、正式に将烈を犯罪者として扱われることとなりましたので、そのご報告までに」

 「・・・・・・そこまでして葬りさりたかったのかね、将烈を」

 「あの男は危険です。一枚岩になり、罪を犯す者と戦わねばならない我々にとって、彼のように身勝手に動かれては面目が立ちませんし、世間を迷わせてしまいます」

 「迷うとは」

 それに対して答えたのは、是芳だ。

 見た目よりも低い声で、斎御司を威嚇するかのように。

 「『正義と秩序』ですよ」

 「・・・あの男は、それが無いと?」

 是芳はクスクスと笑い、目元のホクロを摩りながら答える。

 「ある無しは知りませんが、これからの警察には不要な考えを持っている、ということですよ」

 「不要?」

 「ただでさえ、この国は腐敗しています。見てくればかり気にして、本来の姿を見ようともしない。このままではこの国は滅んでしまいます。海外に乗っ取られてしまいます。この国を守るためには、絶対的な正義と秩序を持つ者が上に立ち、人々を導いていく必要があるのです」

 まるで演説のように話す是芳の横で、咲々原は腕組をしながら斎御司を睨みつける。

 いや、もとからそういう目つきなのかもしれないが、斎御司のことを快く思っていないことが確実に分かる。

 「君たちにはそれが出来ると?」

 「勿論です」

 微笑みながら桃源がそう答えると、斎御司は目元を隠しながら鼻で笑った。

 「伏見、やめろ」

 斎御司が笑ったことが気に入らなかったのか、後ろにいた伏見が腰にあったナイフを取り出そうとしたため、桃源が止める。

 「やーい、拓斗怒られてやんの」

 「うっせ」

 「いや、私こそ失礼したね」

 失礼した、とは言っているものの、斎御司はいまだ笑みを消していない。

 「斎御司さんともあろうお方が、血迷いましたね」

 「君が何を以てそう言っているのかはわからないが、私が血迷ったなどと思っていないよ。今までも、これからもね」

 「・・・そうですか」

 「君は、なぜあの男・・・将烈がこの道を選んだのかわかるかね?」

 「あなたが導いたのでは?」

 「いや。あくまで私は1つの道として教えたまでだ。最終的に決めたのは彼自身だよ」

 「では、なぜ?」

 「君たちには、わからないだろうな」

 斎御司は、そう言って窓の外を眺める。

 桃源たちは部屋を立ち去る時、将烈の処分とともに、斎御司にも処分が下されるから連絡を待っていろ、とのことだった。

 斎御司の部屋からの帰り道、桃源たちはこんなことを話していた。

 「なんだったんですかね、あの意味深な笑みは」

  穏やかな口調で話し出したのは、南谷だ。

 それに対し、横瀬と是芳が適当に言う。

 「強がりじゃないのかな?」

 「そうだよ。幾ら地位があったって、権力が敵に回れば何も出来ないよ。ね?刃奈」

 是芳に名前を呼ばれた桃源は、特に気にすることもなく足を進める。

 何も言わない桃源に、伏見が尋ねる。

 「桃源、あいつの部下だったんだろ?なんであいつ売ったんだよ」

 「ああ、そういえばそういうこと言ってたね。お世話になってたんだ、刃奈」

 「・・・・・・別に売ったわけじゃない」

 「酷いですね。俺だったらショック受けて寝込むかも」

 「理人が寝込んでも誰も困らねえ」

 「竜胆さんそれはあんまりですよ」

 「特に目立ってた印象はないけど、刃奈が嫌いな性格だったのかな?」

 是芳がそう言うと、桃源に「そこまでな」と言われてしまい、みな口を紡ぐ。




 「やっぱりいるよな」

 鬧影は、なんとか監視たちをまいて斎御司の家まで来ていたのだが、斎御司の家にも監視の男たちがいた。

 ―家族に心配しなくていいと伝えてくれ。

 その一言を伝えるためにわざわざ来た鬧影だが、表にも裏にも男たちがいて、まるで入る隙がない。

 物々しい空気を発するその家を見ていると、配達員の職員だろうか、バイクに乗った人物が、斎御司の近くの家に停まり、ポストに何かを入れていた。

 「・・・・・・」

 家の中では、斎御司の妻と子供が不安そうにテレビを見ていた。

 「パパは?」

 「お仕事忙しいんだって」

 忙しくてもきちんと帰ってきていた斎御司に、愛娘は心配そうに母親を見上げる。

 まだ小さなその身体を抱きしめたとき、インターホンが鳴る。

 何だろうと思い出てみれば、配達員の方が荷物を届けに来ていた。

 「ありがとうございます」

 「ハンコかサインいただけますか」

 「サインでいいですか」

 ボールペンでサインをして荷物たちを受け取ると、母親はお辞儀をすると、ポストの中のものを取り出してから家の中へと入って行く。

 荷物は両親からの食品らしく、なかなか外へ出させてもらえていなかったため、有り難いと感謝する。

 郵便物の中には、嫌がらせの内容のものもあり、それらはすぐに捨てたい気持ちもあったのだが、常日頃から、斎御司に証拠集めだから取っておくようにと言われていた。

 仕事内容が仕事内容のため、単に鬱憤を晴らそうとしてくる者がいることも知っている斎御司は、家族を守るために逮捕するための証拠を集めていた。

 他には、ダイレクトメールや勧誘のもの、宅配サービスや地域のお知らせなど、色々なものが届いていた。

 こういったチラシはあっという間に溜まっていくな、と思いながら、1枚1枚確認をしながらゴミ箱へ入れていく。

 「あら?」

 ふと、何かメモのようなものが混ざっていた。

 「・・・!」

 「ママ、お絵かきしたい」

 「美乃・・・!」

 「どうしたの、ママ?」

 母親は娘を強く抱きしめた。

 娘の苦しそうな声を聞いてようやく解放すると、先程のメモを読み返す。

 「パパね、元気だって。すぐに帰ってくるって」

 「パパ帰ってくるの!!今日?」

 「今日は難しいかもしれないけど、近いうちに帰ってくるわ。それまで、ちゃんと待っていようね」

 「うん!パパが帰ってきたら一緒にご飯食べる!!」

 すでに嬉しさのあまりくしゃ、となってしまったそのメモは、監視の男たちにみられないよう、キッチンの引き出しに潜ませる。

 ―連絡が出来ずすまない。私は無事だ。心配させてすまない。必ず帰る。

 「やれやれ」

 配達員に頼んで、チラシにメモを混ぜてもらった。

 あの配達員が親切な人で良かったと心から思っていた鬧影。

 「さて、これからどうするかな」

 そう思っていた矢先、帰り道、思わぬ男たちと出くわす。

 「「あ」」

 「あ」

 「「・・・・・・」」

 「・・・・・・」

 「誰だっけ?」

 「知らん」

 「俺は知ってるぞ。手配書で見たことある顔だからな」

 「やべ。手配書って言ってるんだけど」

 「咲明、逃げよう」

 「確か、将烈の知り合いだよな?」

 「「・・・・・・」」

 「将烈の同期の鬧影だ」

 「怖い。将烈って言ったよ今。将烈って聞こえたよ今」

 「あいつの同期が何の用だ。俺達はここでお縄になる心算はねえぞ」

 「・・・・・・話していいのかわからないんだが」

 時間を持て余していたからなのか、将烈から以前聞いていたことがあったからなのか、鬧影は今将烈に起こっていることを話してみた。

 それで何か解決するとも思っていないが、もしかしたら、という期待があった。

 一通り話終えると、男たち、もとい黄生と咲明は互いの顔を見合わせる。

 「ということになってて、将烈の居場所がわかるとか、連絡手段しってるとかないかと思ったんだが・・・」

 無理だよな、と諦めた鬧影だが、2人はどこから出してきたのか、肉まんを頬張りながら平然と答える。

 「連絡なら取れると思うけど」

 「は?」

 「怖い。この人怖い。なんか怖いな~、怖い気がするな~とは思ってたけど、やっぱり怖いんだ。目つきで人を殺せるもん」

 「黄生、生まれ持ったものを否定するんじゃない」

 「これ美味しい」

 「え、なんで連絡取れるの」

 「絶対ってわけじゃねえ。確実ってことでもねえ。ただ、連絡取れるとしたらこの方法かなって」

 「教えてくれ」

 「てかさ、あんたのその耳に付いてるのって、紫崎が作ったやつだろ?」

 「え?ああ、そうだけど」

 「あいつがそれ持ってれば連絡取れんだろ。持って無いってことは、そもそも関わらせないために持っていってねぇんだよ。ってことは、連絡取らねえ方がいいんだよ」

 「そうかもしれないけど、一方的にでいいから連絡がしたい。こっちの状況だけでも伝えておきたいんだ」

 「・・・どうする黄生」

 「俺はどっちでもいいよ。咲明決めなよ」

 うーん、と考え始めてしまった咲明を、鬧影はただじっと見つめる。

 この2人と将烈がどういう関係なのかは知らないが、捕まえずに放っておいてるということは、許しているということなのか。

 それとも別の理由があるのか、と鬧影が考え出したことに気付いたのか、黄生は肉まんを指し出してきた。

 「食べな」

 「え」

 「空腹じゃ何も出来ないよ」

 「・・・ああ、ありがとう」

 「大変だね。組織ってだから嫌になっちゃうよね。それでも居続けてるんだから偉いよね。俺は無理」

 「組織にいないと組織とは戦えない」

 「将烈も同じようなこと言ってた。でもまあ、現状は相手さんにとって都合が良いよね。将烈本人は組織にいないんだし。上層部からの指示で動いてるなら何でも出来るし。ついでに権力使って好き放題だし」

 「だから一度あいつには戻っていてもらわないと困るんだ。何を調べているのかは知らないが」

 「あ、知らないんだ」

 「え、知ってるのか」

 「あー・・・知らないよ。俺知らない。肉まん美味しいねぇ」

 「黄生、お前嘘下手すぎ」

 ここでようやく咲明が考える仕草を終わらせ、鬧影たちの会話に入ってきた。

 「連絡方法を教えることは出来ない」

 「咲明ケチだね」

 「仕方ないだろ。ここでこいつに教えたら、今後俺達の連絡に支障をきたすかもしれないだろ」

 「なーる」

 「だから、伝える内容を教えてくれ。こっちで連絡しておく。言っておくが、必ず返事が来るっていう保証はないからな?」

 「わかった」

 「それと、もし連絡が来てもお前に教えなくていいか?そもそも一方通行の連絡方法で、相手が受け取ったかどうかが分かるだけだ」

 「いつも返事が来たときはどうしてるんだ?」

 「こっちがそれを受け取る。で、あっちがそれを確認する。それだけ」

 「・・・受け取るにはどうしたらいいんだ」

 「受け取るのはバレるからダメだって。そもそもその様子だと返事は来ねえよ」

 「万が一来たら?」

 「黄生、お前どっち側なんだよ」

 「俺はいつだって俺の味方だよ」

 「そういうのはいいんだよ。ったく。じゃあ、もし返事が来たら・・・。そうだな。お前家どこだよ」

 「へ?」

 「でもあれか。お前んとこも監視入ってんのか。じゃあ・・・窓開けとけ」

 「窓?」

 「紙飛行機にでもして飛ばすからよ。それでいいか?」

 「俺が折る!すっごく飛ぶやつ!」

 冗談なのか本気なのかは知らないが、咲明の提案にただ頷くしか出来なかった。

 将烈が指名手配犯になってしまったこと、斎御司も処分されること、波幸や火鷹も異動になったことなど、現状含め出来るだけ情報を沢山伝えた。

 「あんた珍しいな」

 「へ?何が?」

 「だって将烈って嫌われもんだろ?幾ら同期ったってあいつを助ける義理はねえはず。なのになんであいつの我儘聞いたり、こうして俺達みたいなのに情報伝えんだ?」

 一瞬、ポカンとしてしまった鬧影だが、確かにそうだな、と思ったあと、仕事関係の人間がいないからか、今まで感じていたことを口にする。

 「確かに、あいつは自分勝手だし変わってるし、何考えてんだがわからないが」

 同期は明らかに避けていたし、嫌っていた。

 同期だけでは留まらず、将烈という人間の存在は色んな意味で大きいようで、あの手この手で潰そうとする奴らは幾人もいた。

 ヤンキ―かと思うくらい目つきは悪いし、両膝を曲げて煙草をふかしてる姿はもう、やばいくらい警察の人間には見えない。

 鬧影は、目の前にいる、その男と同じ瞳の色を持った男の目を見つめる。

 「俺が、初めて信頼出来ると思った奴だから」

 あいつの口から出る言葉は、いつだって嘘いつわりの無いものだった。

 その場限りのものでもなく、表面上だけのものでもない、形の無い『正義』を貫くための、ある意味『純粋な言葉』。

 「人は嘘を吐く。どれだけ仲が良いと思ってた奴でも、どれだけ正しいと思ってた奴でも、どれだけ愛した人でも」

 信じた人に裏切られるのは、慣れた。

 だからこそ、警察という正しさを遂行する仕事に就いたというのに、そこでも多くの闇があって、嫌気がさした。

 「あいつの言葉は、行動は、清々しいほど泥臭ぇ」

 軍人のくせに上官に逆らい、能力があるのだから、上にいって綺麗な身なりでそれなりに仕事をしていれば一生安泰だろうに。

 「自分がどれだけ泥かぶろうが、どれだけ血を流そうが、あいつは自分の後ろにいる奴らを守る」

 だから、余計に相手は危機感を持ってしまったんだろう。

 勢力が大きくなっていくその存在を。

 「それよりももっと、あいつの根幹には何か、あいつが作ろうとしてる世界があるような気がするんだ」

 「世界?」

 「別にこれは本人から聞いたわけじゃない。でも、ただ単に、仕事で成功を収めたいとか、警察を正しくするためとか、そういうことじゃない、何かを求めてる気がする」

 「・・・・・・肉まん食べる?」

 「・・・・・・」

 この謎の空気感に堪え切れなくなったのか、黄生が鬧影に肉まんを差し出すが、それを咲明に取られてしまう。

 咲明は肉まんを頬張りながら、肉まんを持っていない方の手で目もとを摩る。

 「安心しろ。ちゃんと連絡はする」

 「恩にきる」

 「最近あんまり聞かねえ言い方だな」

 「よろしく頼む」

 「おお」

 そう言うと、鬧影は颯爽と去っていく。

 その背中を見ながら、咲明は手に持っていたはずの肉まんが無くなっていることに気付き隣を見ると、黄生が残りの肉まんを食べていた。

 黄生はお腹いっぱいになったのか、その辺で適当に寝始めてしまったため、咲明は将烈と連絡を取る為の準備を進める。




 「お、鬧影さん、無事に斎御司さんの奥さんに伝言届けたって」

 「よかったー」

 「さすが鬧影さんだな!元役人だけあってちゃっちゃと仕事こなしてくれるぜ!」

 「恭久、さっきからどうしたんだ?」

 「んー・・・桃源ってさ、確か斎御司さんの部下だったよなーと思って、何かあったのか調べてる」

 「へー、そうなんだー・・・え?まじ?」

 「斎御司さん、確か長く続いた部下はいないとか言ってたけど」

 「長くは続かねえけどいなかったわけじゃねえからな」

 紫崎と柑野は椅子で移動して碧羽の席まで向かうと、碧羽はブルーライト用の目薬を指しながらまた画面に視線を戻す。

 どれどれとみんなで碧羽の画面を覗いていると、碧羽のイヤーカフに誰からか連絡が来る。

 イヤーカフを触れると、碧羽は手を止めることなく話をする。

 「なに」

 『俺』

 「知らん。切るぞ」

 『今ラーテルも獲物物色中で手が空いてるから手伝ったのに』

 「繋げるぞ」

 そう言うと、眞戸部、紫崎、柑野にも聞こえるようになる。

 「で、何か分かったのか」

 『一応言っておくけど、俺はセキュリティ系が得意だから』

 「わかってる」

 『恭久がやればいいのに』

 「俺がやると足跡が付くかもしれないから。お前の方が確実かと思って」

 『今度お菓子送って』

 「で?」

 相手が誰なのか眞戸部には分からなかったが、どうやらその道のことに詳しいらしい。

 『言われた通り、まずは斎御司と桃源だけど、確かに桃源が警察に入ってすぐ斎御司の部下になってる。1カ月で異動願い出してるみたいだけど』

 「1カ月で?理由は?」

 『えっと・・・性格の不一致だって。離婚理由みたい』

 「何かあったとか分かるか?」

 『周りには、結構不満漏らしてたみたい。犯罪者に救済するような言葉をかけるとか、更生させる方に力を注いでるのが気に入らなかったみたい。ああ、あとこんなんもある』

 「なに」

 『将烈ばかり特別扱いしてるって』

 「なんだそれ」

 イヤーカフからそんな会話が聞こえてくるが、碧羽が見ているのはまた別の内容で、桃源のこれまでの異動先や表彰などの経歴。

 なかなか優秀なようで、画面に映っている画像の桃源は、とても温厚で優しく、誰にでも慕われそうな笑顔をしていた。

 碧羽がそれを別のパソコンの画面へひょいっと持っていくと、次は是芳と書かれた男のものが出て来た。

 『是芳充は、桃源に心酔してる若者ってとこか。昔から荒々しいやり方をしてたみたいで、上から注意勧告を受けたこともあるそうだけど、今じゃ桃源の右腕的存在。どんだけ卑劣に制裁しても桃源は何も言わないから居心地いいんだろう』

 「犯罪歴あるぞ」

 『ああ。それ、正式書類には記載されてない。多分桃源が消したんだろう』

 「桃源が消したってことは、上は黙認してるのか」

 『だろうな。問題児とはいえ、腕はたつ』

 「短期間で色々回ってるな」

 『何処に行っても問題になるから厄介払いされてる。ま、そのせいというかお陰で、色んなことが出来る』

 「えっと、次」

 『咲々原竜胆。特に何か問題があるわけじゃないけど、警察に入った理由が(人を撃てるから)だと』

 「なんでこんな奴入れたんだよ」

 「俺も拳銃いじらせてくれそうって理由だったけどさすがに言えなかったな」

 『あ、でも学生時代に暴行事件で何度か捕まってる。女子供年寄り容赦ないな』

 「全部示談になってるな」

 『実家が不動産屋で金持ってるのと、カツアゲ常習犯だから金はあったんだろ』

 「俺も金ほしい」

 『南谷理人、こいつはサイコパスだな』

 「あー・・・とっ捕まえた奴らみんな半殺しにしてんな」

 『メリケンサック持ち歩いてるって』

 「あ、俺達より年上だ」

 『伏見拓斗は猫好き』

 「いや、そういう情報はいらないから」

 『だってこいつSNSに猫の写真ばっかり載せてる』

 「これまでに暴力沙汰無し。なんで桃源のとこにいるんだ?」

 『・・・・・・あ』

 「ん?」

 『あー、是芳の幼馴染だ』

 「是芳の?実家近くだったか?」

 『小学校が同じ。是芳が中学受験で別の中学入ったけど、暴力沙汰で退学。結局伏見と同じ地元の中学に入ってる』

 「高校も大学も同じところ行ってる。うわ。男同士でなにこれ」

 『アメフトで全国まで行ってる。すっげ』

 「体力勝負なら柑野だな」

 「え?」

 『横瀬潤は、名前が“ヒロ”なのに“ジュン”って呼ばれる』

 「だからそういう情報はいいよ」

 『こいつも大した情報は無いよ。かなりの酒豪ってことくらい。多分酒癖が悪くてそこを是芳あたりにスカウトでもされたんだろ』

 「経歴もパッとしないな」

 「俺たちが言えた義理じゃないけどな」

 「俺達は一応問題児だから」

 『斎御司の処分に関しては多分、電波妨害出来る部屋で話し合ってると思う。桃源たちの連絡の履歴には一切残って無いから』

 「それ突破出来ないの」

 『これ作ってるの健だろ』

 「あ、そうなんだ」

 『こういうのは大抵あいつなんだよ。突破出来ないことはないだろうけど、俺嫌だよ。あいつと対戦するの』

 「お互い嫌だろうな」

 『これくらいでいい?ラーテル戻ってきた』

 『お!誰かと話してんのか!?誰誰!』

 『五月蠅い。切るぞ』

 「あ・・・切れた」

 「さっきのって誰?」

 「眞戸部は知らないのか。ああ、そっか。健と知り合いなのは波幸か」

 「波幸が?」

 「さっきのは炉端稚夜っていって、まあ、どちらかというと・・・警察関係者が関わっちゃいけない方の人間だけど、かなり優秀」

 「健っていうのは」

 「ああ。それはうちの自慢のハッカー。正真正銘、警察の人間だから」

 「へえ・・・・・・」

 色んな繋がりがあるんだな、と感心していた眞戸部は、自分がどれだけ狭い世界で生きていたんだろうと痛感する。

 その狭い世界の中でも希望があったのは、それこそ斎御司と将烈のお陰だ。

 「そういえば」

 「ん?」

 「どうした?」

 「将烈さんって、なんで色んな人と繋がりがあるんだろう」

 「「「は?」」」

 「コネがあるわけでもない。上司っていっても斎御司さんくらい。それなのに、波幸たちも炉冀たちも、他にも俺が知らない人たちが繋がってる。・・・不思議な人だな」

 「・・・将烈さんは多分、自分で気付いてないんだと思う」

 パソコンをいじっている碧羽が、その指を止めて顔を眞戸部に向ける。

 「あの人は、自分の信念のまま動いてるだけ。でもそれが、何よりも難しいって知らないんだ」

 「だな。あの人は、綺麗事じゃなにも守れないってことを知ってる。だから、絶対に行動で示してくれる。どんだけ自分の身を汚してもな」

 「俺達たぬきが隠密に仕事出来んのも、あの人が情報上手く制御してくれてるからだし」

 「あの人がいなかったら、多分俺達はこんな風に仕事出来てないし、最悪辞めてたかもしれない」

 「斎御司さんはたい焼き奢ってくれた」

 「俺はかき氷奢ってもらった」

 「え、俺ペットボトルの水・・・」

 「生命にかかせない水をいただけたんだ。感謝しろよ」

 「いやしてるけど」

 「・・・斎御司さんはそういう感じなんですね」

 「斎御司さんがいるから将烈さんもあそこまで出来るんだろうし、俺達のことだって、結構大目に見てくれてるよな?」

 「内容によってだけどな」

 「それは仕方ねぇよ」

 「てなわけで、俺達はどういうわけか、縁があって今ここにいる」

 「普段は恩だのなんだの言う心算はないが、今は緊急事態だ。何もしないっていう方が無理な話でな」

 「どうせ斎御司さんと将烈さんは手始めに処分するだけで、2人の息がかかった俺達だって最終的には追い出そうって魂胆だよ」

 「まずは情報を即座に手に入れて共有することだ」

 「俺と・・・使えそうなのは?」

 「恭久以外か・・・。健と稚夜がダメなら、俺?」

 「あ」

 「あ?」

 「・・・タカヒサとか?」

 「いや、紫崎タイプ2人いらないし」

 「でもいじれるだろ?」

 「いじれるだろうけど」

 「あ」

 「あ?」

 「じゃあ、朝永」

 「え、なんか頼みたくない」

 「いやでもあいつならそれなりに出来るぞ」

 「それならタカヒサの方が頼みやすいっていうか勝手にやってくれそう」

 「他いるか?」

 「でもよ、情報が手に入ればいいんだろ?」

 「まあな」

 「なら」

 「ん?」

 「誰かいるか?」

 「沢村。沢村優一」

 「ああ・・・確かにそっち系は強いかも」

 「誰かコンタクト取れるのか?」

 「もうさ、恭久1人に頑張ってもらうんじゃダメか?」

 「おい」

 「俺は賛成」

 「俺も異議なし」

 「えと・・・」

 「タカヒサに連絡する」

 眞戸部はわからないが、そのタカヒサという男に連絡を取ると、わりとあっさり承諾してくれたらしい。

 ありとあらゆる情報を一通り伝えると、タカヒサは早速1通のメールを送ってくる。

 碧羽以外がクリックするだけでウイルスがまかれるような危険なトラップ付きで。

 「柑野、絶対いじるなよ」

 「わかった。大人しくお茶飲んでる」

 そこには、斎御司処分の日が記されていた。


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