夢の先に妖(あやかし)は何を見るのか
桔梗 浬
第1話 命ある限り
パチパチと木の燃える音が聞こえる。深夜にも関わらず辺りがぼんやり橙色に染まっているのは、焼け落ちて今も尚燃え続けている家が至る所に存在しているから。
全てを焼き尽くし、全てを奪う。それが奴らのやり方だ。
そして悲しみは突然襲ってくる。
一粒の涙が、
――
ガックリと落とした肩の先には、両手に刀が握りしめられている。何百という獣や
全てが虚しく、身体中の力が抜けるようなそんな悲壮感が全身を駆け抜けていた。
終わりのない争い。無駄に失われていく命。
生きている者はいるのだろうか。誰か一人でも救う事が出来たなら……この戦いに意味はあったと思えるのに。
背中に愛用の
身体は傷つき、至る所泥や血で汚れていた。
普通に暮らしていれば、今頃
ここは
―― 祓っても、祓っても
息絶えた死骸に容赦なく
「消えろっ。くっ……!」
「ギャー―っ」
餓鬼は叫びながら塵と化し消え去った。
「ハァ……。ハァ……」
熱風が吹き抜け、
辺りは目をおおいたくなる程の無惨な光景が広がり、至る所火の手が上がっている。家は崩れ落ち、原形を留めている物はほとんどない。
――
足元には生き絶えた死骸が転がって山を築いている。
『
『う~ん。どうしてだろう。考えたこともなかったな。ただ……、俺は信じてるんだ』
『何を?』
『平和な世界……。笑うなよ』
『平和?』
『そう。人々が安全に安心しして暮らせる世界だよ。だから一人でも多くの人を救いたいんだ』
真っすぐに前を向いて
――
『逃げろ! こいつはお前が
『嫌だっ。あなたを置いて行けるわけがないではないか』
『いいから、行け!』
―― 何故……。
『私もまだ戦える!』
『大丈夫だ。俺のことは心配するな。後で拠点で会おう。約束だ。頼む逃げてくれっ』
―― 約束したのに。あなたは戻ってこなかった。
―― 何故私は逃げたのだ? 私が
ここはつい先日まで人が幸せに暮らしてた場所。多くの家族が貧しくとも幸せに暮らしていた場所。
そこにあいつらが……。多くの人を殺め、そして
人の負の感情を集め、人間を核に
――
果たして一人でやれるのか。やれるのか? じゃない。やるのだ。やらなければならない。
――
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