第36話(由美視点)

(由美視点)


 矢内君と嘘のお付き合いを初めてから一ヶ月以上が経過していた。


 そして今は午前授業が終わり、昼休みになった所だ。 私は女子友達と一緒にお昼ご飯を食べていた。


「えっ!? 由美ってまだアイツと付き合ってたの!?」

「うん、まぁねー」


 私はご飯を食べていると、突然そんな話を友達が振ってきた。 アイツとはもちろん矢内君の事だ。


「え、マジで? あはは、まだ付き合ってるとか由美ヤバすぎでしょww」

「ってかなんで未だに付き合ってるん?? 罰ゲーム始めたのってもうだいぶ前でしょ??」

「あ、確かに! もう罰ゲームとしては十分過ぎるくらいの時間は経ってるんだし、もういいじゃん。 あんなガリ勉オタクさっさと振りなよー」


 周りの友達は私に向かって矢内君とさっさと別れろという話で盛り上がり始めていった。


「んー、まぁでも別に矢内君に何か変な事されてるわけじゃないし、しばらくはこのままでもいいかなーって」

「はぁ? ちょっと何言ってんのよ由美?? 私達がJKでいられる時間だって限られてるんだよ??」

「そうだよ、それなのにいつまでも罰ゲームで付き合わされてる男と恋人ごっこしてる場合じゃないでしょ! もう罰ゲーム終わりにしていいからさっさと振りなってー」


 私がそう言うと、友達からはそんな事ない! 考え直してさっさと別れろ! と、強く否定してきた。


 アタシとしては今の状況もそれなりに楽しめてるから、しばらくはこのままでもいいかなーって思ってるんだけど……まぁでもそんな事を友達に言っても理解はされないだろうし、別にそこまで言わないでもいいか。


「あ、そうだ! そういえば今日さー、〇〇高校の男子達とカラオケに行くんだけどさー、由美も行こうよ! 今回の男子マジで皆イケメンよ!」

「あはは! 写メ見してもらったけどマジで皆イケメン過ぎてビックリしたわw」

「だよねだよね! しかも今日来る男子皆フリーらしいからさ、お持ち帰りとかも自由にオッケーらしいよ??」

「え、何それ最高じゃん、あはは! 由美もたまにはさー、ぱーっと一緒に盛り上がって遊ぼうよ!」


 そんな時、ふと突然友達が男子高校生との合コンに誘ってきてくれた。 でもアタシは……


「んー、悪いけどアタシはパスで」

「えっ!? な、なんで!? 今回の合コンはマジでレベル高いよ?? だから由美も行こうよ! 絶対に損しないって!」

「いやゴメンだけどさー、例え嘘だとしても今のアタシには彼氏がいるからさ、だからその間は他の男と遊びに行くような事は絶対にしないって決めてるんだ」

「え!? ど、どうしたのよ一体?」

「しっ! ほら……由美の元カレさ……」

「え? あ、あぁ……! そ、そっか、そういえばそうだったわね……」

「うん。 だからごめんだけど、今回は他の女の子を誘ってあげてよ」

「う、うん、わかったわよ」


 私はこの世で一番嫌いなのは“浮気をするカス”だ。 だから当然私も同じような人間には絶対になりたくはないから、その友達に誘われた合コンには悩む素振りもなくすぐに断った。


 という事でアタシの話題についてはこれで一旦流れたので、周りの会話はまた新しい話題へと移っていった。 でもアタシは次の話題には参加せずに、とある事をぼーっと考え始めていった。


(でも確かに……何でこんなにも長い間矢内君と付き合えてるんだろう?)


 私はお昼ご飯を食べながらふとそんな事を考えだした。


 確かに矢内君とお付き合いはしてるけど……でもそれは罰ゲームという形で付き合ってるだけだ。 矢内君の事が好きだから告白したわけではない。


 だから今は矢内君と一緒に過ごしている日は多いし、一緒にいて楽しいなって思う事も時々はあるのだけど……でも別に矢内君に対して何かときめくような事があったりだとか、ドキドキとするという事とかは一切ない。


 それに対して今までの元カレに対しては……まぁそりゃあ一応ときめく瞬間があったり、ドキドキとさせられた瞬間ってのはそれなりにあった。


 それで、やっぱりそういう気持ちにさせてくれるのが彼氏っていう存在なんじゃないかなってアタシは何となく思っていた。 だからこそアタシは今までの元カレたちと付き合っていたわけで。 でも……


(うーん……あっ)


 でもその代わりに……矢内君と一緒にいると、なんというか妙な安心感みたいなのは感じさせられている事に気が付いた。 例えば一緒にお昼ご飯を食べた時や、放課後に他愛ない話をした時、放課後に一緒に帰ってクレープを食べた時とかに、私は安心感のようなものを感じてた気がする。 あの感覚は一体何なんだろうね?

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