第3話
ギャル達による噓告白の話を聞いた次の日の放課後、予想通り俺は水瀬さんに校舎裏に呼び出された。
「どうしたの水瀬さん?」
「あ、うん、えっと……アタシ、矢内君の事が好きになったんだよね。 だから、良かったら彼氏になってほしいんだけど」
「え!? 本当に!?」
という事で俺は水瀬さんから若干棒読みな感じは否めない告白を受けた。 いやまぁそりゃあ好きでも無い相手に告白するんだからこんなもんだよね。
という事で俺は改めて水瀬さんの事をまじまじと見つめてみた。 ってかこんなに水瀬さんの事を見たのは初めてかもしれない。
水瀬さんは身長は160センチ台のスラっとしたスレンダー体型の女子だ。 見た目は前にも言ったように、明るい染めた金髪ヘアと沢山のピアス指輪、さらに丈の短いスカートが特徴的な陽キャなギャルだった。
ちなみに水瀬さんも俺と同様に中学からこの学校に通っているので、水瀬さんとは友達という訳ではないんだけど、でも一応知り合いという意味で言えば水瀬さんとは三年以上の付き合いになる。 まぁ陰キャな俺と陽キャなギャルの水瀬さんでは今まで接点が無かったから、中学の時に水瀬さんと話をした事なんて一度も無いんだけどさ。
まぁそんな一言も喋った事の無いギャルに棒読みな告白をされた訳なんだけど……でも可愛い女子から告白をされたという事実には変わりないので、俺は本気で喜びながらその告白を受け入れた。
「いやぁ水瀬さんからそんな事を言われるなんて凄く嬉しいな! 実は俺も水瀬さんの事が凄く好きだったんだよね」
「え、そうなの?」
嘘である。 この男、別に水瀬さんの事が特別好きという訳ではなく、ただ告白してもらえてるからお世辞としてそう言っただけである。 まぁ思春期男子学生なんて皆そんなもんだよね。 思春期男子なんてバレンタインデーに義理チョコくれるだけでめっちゃ好きになるような人種だもん。
「うん、そうだよ。 あれ、もしかして意外だった?」
「え? あ、あぁ、うん、まぁ。 矢内君みたいな男子ってアタシみたいなタイプの子って苦手な気がしたからちょっと意外かも」
水瀬さんはそんな事を言ってきたけど、でも俺は水瀬さんの事が苦手だとか思った事は一度も無い。
(いや、というか多分逆だよな?)
水瀬さんみたいな女子の方が俺らみたいなタイプの男子は苦手なんじゃないのかな? だって何か知らんけど俺の事を“ガリ勉オタク”っていうあだ名で呼んでるくらいだしさ。
「え、そんな事ないよ? 中学の頃から水瀬さんの事はすっごい美人な女子だと思ってたしさ」
「あ、そ、そうなんだ」
「うん、だから是非とも水瀬さんの彼氏にしてください!」
だから俺は水瀬さんに“俺の何処が好きになったのか?”というような厄介な質問はせずにさっさと彼氏にしてくれと伝えた。 好きでもない男の“好きな所”を言わなきゃいけないなんて嫌だろうしさ。
「う、うん、まぁそう言って貰えるなら……あ、でも」
「でも?」
「あぁ、うん、あのさ……アタシ、人に彼氏の存在を知られるのって好きじゃないからさ……だから私達が付き合ってるのは誰にも言わないってお願いできる?」
水瀬さんは申し訳なさそうな顔をしながらそう言ってきた。 俺はその顔を見て一瞬で理解した。
(あぁ、なるほどな)
これは噓告白だから、水瀬さんとしては俺達が付き合ってる事を誰にも言わないで欲しいのだろう。 最終的に水瀬さんが俺を振る事が前提なのだから、もし振る前に俺達が付き合ってる事が周りにバレてしまっては何かと面倒な事になりそうだしな。
「あぁ、うん、もちろん良いよ! じゃあ、改めてよろしくね!」
という事で俺は水瀬さんの提案を受け入れて、晴れて水瀬さんと付き合う事となった。 まぁ嘘のカップルではあるんだけど、それでも振られるその日が来るまでは全力で楽しむぞ!
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