第4話おまけ①【女子会】





おまけ①【女子会】

 「麗翔様、準備が整いました」


 「こちらもです」


 「じゃあ、そろそろ始めましょう」


 緊迫した空気を漂わせながら、麗翔始めとした亜衣奈、妲翔、夢希のほか、帝斗の部下である愛樹の計五人が揃っていた。


 テーブルに並べられたのは、ジュースやお茶、ワイン等だ。


 そしてきっと買ってきたのだろう、クッキー、チョコレート、マカロン、ポテトチップスなどのお菓子も沢山用意してある。


 「久々の女子会!開催!!!」


 そう。これはただの女子会。


 ただでさえ男が多い場所で、紅一点、とは言い難い女性陣。


 みな一様に男勝りな性格を持っているためか、こうしてたまに女子会を開き、溜まった鬱憤を晴らしているのだ。


 「で?夢希、最近ダイエットしてるって聞いたんだけど、なんで?」


 「麗翔様、それは聞かないであげてください」


 「どうして?まさか、男絡みじゃないでしょうね」


 「ち、違いますよ!!ただ、身体が重くなってきて、動きが鈍くなったら困るので」


 「怪しいわね・・・まあいいわ」


 内気な性格の夢希は、いきなり自分が話題の中心になってしまってことに焦った。


 すでにワインを飲んでへべれけ状態の麗翔は、夢希の肩に自分の腕を回し、おっさんのように絡む。


 「性質悪いわよ、麗翔様」


 「妲翔こそ、なんか面白い話ないわけ?」


 「あら、私の今までの男性経験でも話せば良いのかしら?」


 夢希は顔を真っ赤にして両手で顔を覆い、亜衣奈は興味があるのか、耳をダンボにしている。


 「はんっ。自慢話しかないってわけね」


 「残念だわ。おこちゃまにも話せる内容じゃなくて。亜衣奈は生幻と仲良くやってるの?」


 亜衣奈と生幻は鬼門を守っている。


 そのため、きっと他の人よりは連絡を取り合っているだろう。


 「相変わらず生意気な男よ」


 「向こうも同じこと思ってるでしょうけどね、ほら夢希、もう耳塞いでなくて平気よ」


 妲翔の話を聞くまいと、両目両耳を塞いでいた夢希に気付き、妲翔が教えてあげる。


 「もともと生幻なんて無口でしょ。あいつら、琉峯に似てるのよね」


 「じゃあ、私たちも麗翔様に似てるってことですか?」


 「私こんなに口悪くないわ」


 「いえいえ。私も亜衣奈も夢希も、昔はもっとおしとやかな可愛らしい女だったのよ?」


 「良く言うわね。私が元帥になって初日に胸を見てほくそ笑んでたくせに」


 「あら、そうだったかしら?」


 余裕そうに妲翔は微笑んだ。


 クッキーに手を伸ばし、頬を膨らませている夢希は、片手にオレンジジュースを持っている。


 「麗翔様は、まだ男性に抵抗があるんですか?」


 何気なく、亜衣奈が口を開いた。


 「・・・男は嫌いよ。でもまあ、ここの奴らはまだマシね。女だからって舐めてこないし。鍛錬とか修行のときなんて、手加減なしでやってくるわよ」


 「へー、意外とガチなんですね」


 少しの間、沈黙が続いた。


 そしてふと、もう一人いることを思い出した。


 「愛樹はどうなの?帝斗元帥のところって、どんな感じ?てかあんた喋るの?」


 「・・・喋るわ」


 「おおお!喋った!」


 愛樹が口を開くことは少ない。


 今までも開いた女子会、愛樹は一言も発せずに終わることがほとんどだった。


 その為か、愛樹が喋ったことに感激した四人は目をキラキラさせる。


 「帝斗様は一途です」


 「え!?そうなの!?めちゃくちゃ色々遊んでそうなのに!」


 「麗翔様、さすがにそれは・・・」


 愛樹は一口ワインを含むと、静かに飲みこむ。


 「『アイラ』を愛おしそうに毎日毎日愛でています」


 「・・・アイラって、誰?」


 「さあ?ここに来る前の女とか?」


 「毎朝アイラに起こされ、文句は言うのですが、最終的にはアイラを抱いて二度寝しようとします。とても困ります」


 「そ、そうよね。部屋に入るタイミングとか、困るわよね」


 「それで?それで?」


 「アイラは気まぐれなので、帝斗様から離れようとするのですが、帝斗様はアイラが離れて行かないように強く抱きしめてしまいます。だからアイラは帝斗様の唇を舐めます」


 「ひゃー!!!」


 「ちょ、ちょっと待って!みんな冷静になるのよ!一旦落ち着きましょう!」


 「夢希!しっかりして!」


 もう、ハチャメチャ。


 「帝斗様はアイラ一筋ですが、アイラは白葉にも翠央にも懐きます。帝斗様はそれが気に入らないようです」


 「まあ、そうなるわよね。それは、帝斗が正しいと思うわ。てか何?アイラってそんなに男漁り上手なの?可愛いの?愛想が良いの?」


 四人はただただ愛樹の言葉を待つ。


 「アイラはとても可愛らしい子です。私も大好きです。・・・ただ」


 「ただ?」


 「・・・おトイレの場所くらい、ちゃんと躾しておいてほしいものです」


 「と、トイレ?」


 あーあ、と言って足を組み直し、妲翔は呆れたようにワインを飲む。


 亜衣奈も夢希も理解したように、ハハ、と小さく笑っていた。


 未だ良くわかっていない麗翔は、余程変な思考になっていることだろう。


 「ちょっと待って・・・トイレ?どういうこと?帝斗ってそこまで手のかかる女が好みなの?え?いやいや、手がかかりすぎよね。人として出来なきゃいけないことだわ。え?じゃあなに?獣にでも育てられてきたから、トイレもワイルドってこと?」


 こんな具合に、ズレた考えのまま話を勝手に進めて行っていた麗翔。


 愛樹は悪びれた様子もなく、ワインを飲んだ。






 その頃、帝斗の部屋では。


 「また帝斗様がアイラ溺愛してる」


 「仕事してくれないかな」


 「じゃあ生幻が言ってよ」


 「なんで俺が。白葉が言えば良いだろう」


 「まったく。猫相手にああも愛を囁けるなんて、余程の猫馬鹿だよ。てかアイラ馬鹿」


 「アイラもアイラだ。気があるような行動をするのが悪い」


 「えっとね、アイラ猫だから。そういうの無いから」


 「アイラー、お前は本当に可愛いなー。よしよし。ほら、俺の髪で遊んでいいぞー」


 「にゃあ」


 自分の長い髪の毛をアイラの前に差し出し、器用に毛先を動かしていく。


 すると、アイラは首を動かしてそれを捕えようとする。


 毛先を捕えたまま、コテン、と横たわる。


 「あー可愛い!なんだそれ!そんなことしなくたって、俺はお前にゾッコんだ!」


 「にゃあ」






 「えっと、どういうこと?整理してみよう・・・まずは」


 「ちょっと、まだ麗翔様分かってないんだけど」


 「放っておきましょ」


 「教えなくていいんですか?」


 「いいのよ」


 数日間、帝斗のことを変態の見る様な眼差しでみることになる。




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