第220話 雪にまみれて
クロにより次々に生み出されたワケミタマドローンたち。生み出されたそばから、クロへと襲いかかる雪玉への盾となっていく。
しかし、時間が経つにつれて、ワケミタマドローンが産み出される速度が落ちてってしまう。
そしてついに、雪玉によって破壊されていく速度が、クロのワケミタマドローンを生み出す速度をわずかに上回りはじめる。
徐々に徐々に、傘状に展開したワケミタマドローンが、雪玉の猛攻により削られていく。
残ったワケミタマドローンと、新たにクロが生み出したワケミタマドローンを組み合わせ、どうにか雪玉を防ぐも、ついに限界が訪れてしまった。
崩壊は、一瞬だった。
その身を守る傘状に展開したワケミタマドローン群が霧散し、クロへと無数の雪玉が殺到する。
その一球一球が、必殺の威力を秘めた雪玉。
あっという間に、クロの体は殺到した雪玉におおわれ、完全に見えなくなる。
氷のドラゴンが雪玉の射出をやめる。
開いていた口を歪め、まるで満足げに嘲笑するように、唸り声をあげる氷のドラゴン。
その時だった。
消えたはずのクロの声が静かに、しかしはっきりと周囲に響く。しかも、氷のドラゴンの首もとから。
「
実は、クロは地面すれすれに降下した際に、ドローンによって投影されたホログラムの映像と入れ替わっていたのだ。
本体たるクロは、追随するワケミタマドローンを一体だけ連れ、自身に雪の映像をプロジェクションマッピングのように投影させていた。そうして身を隠すと、こっそりと雪を掻き分けながら、氷のドラゴンへと接近していたのだ。
氷のドラゴンが拳サイズの雪玉を何度も斉射する間にも接近を続けていたクロ。お陰でホログラムとクロ本人との距離が、徐々に離れて生成して送っていたワケミタマドローンが間に合わなくなってしまったが、こうして無事にユニークスキル、ワンタイムボディの効果範囲まで、氷のドラゴンに接近することに成功していた。
氷のドラゴンは、自身の首もとにクロの姿を見つけると、本能的危機を感じたのだろう。クロのユニークスキルから逃れようとする氷のドラゴン。
しかし、すでにそれは遅かった。
クロのユニークスキルにより、強制的に変形を始める氷のドラゴンの体。その首もとに囚われたおぼろの体が、押し出されるようにして氷の中から現れる。
おぼろの体が雪上へ落下する。しかし、ちょうどそのタイミングで、ユニークスキルの代償がクロに襲いかかってしまう。思わず片ひざをつき、苦悶の表情を浮かべるクロ。
そして、ユニークスキル、ワンタイムボディも解除されてしまう。
ワンタイムボディの束縛から逃れた氷のドラゴンは、元の体へと急速に戻り始めと、クロを噛み殺そうとして、嬉々とした表情でその牙をむく。
その牙が、いままさにクロへと届こうとしたその瞬間、氷のドラゴンの頭部が、突然、横方向へと急速にそれる。
クロの体を通り越し、雪の地面に突き刺さる氷のドラゴンの頭部。
それを成したのは、意識を取り戻した、おぼろだった。
拳を振り切った姿勢のおぼろ。氷のドラゴンの顔面を殴りとばした拳をゆっくりと擦りながら、おぼろがクロをみて告げる。
「機械上がりが、すっかり人間じゃないか。しかも弱くなったんじゃないか」
「敵に囚われてたあなたに言われたくありません」
「それもそうか。ふ、助けてくれたようだな。ありがとう。クロ」
「お礼は不要です。ユウト様のため、必要だっただけです。オボロ」
「わかっているさ。ほら」
そういって、手を伸ばすオボロ。クロからも腕を伸ばす。
そして二人の手が、かたく握りしめられた。
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