第180話 簒奪されし魂たち
「倒せて、ない?」
メラニーが、唖然としながら呟く。
そのメラニーを庇うように前に出る、コボルドセイントのドーバーナ。
「どうやらそのようですね。簒奪されていた魂が、指向性を与えられて顕現したように感じられました」
「ドーバーナのスキル?」
「ええ。あれも一種のアンデッド、なのでしょう。一定以上のランクの魂の簒奪者を倒すとああなってしまう感じですね」
「じゃあ」
「ええ。オボロ様がこの大穴で敵を仕留めた時も、似た状況になった可能性が高いはずです」
どこかのんびりと話すドーバーナと落ち着きを取り戻した様子のメラニー。
そこへじりじりと後退してきたあだむと緑川たちが合流する。
「あだむだ。助太刀感謝する。それであれはどうする?」
「私たちでは倒しきれないでしょうね」
ドーバーナがあだむへと答える。
それに緑川が頷く。
「ええ。でも、やり過ごせば大丈夫です。きっとそろそろあの子達が生まれた頃です」
「では、そうしましょう」
ゆっくりと手を組み、膝をつくドーバーナ。そして、コボルドセイントのジョブ固有スキルが発動する。
「
呟くように口にされたその言葉。その効果はすぐさま現れる。
その場にいた炎のドラゴンを除く全員を囲むように現れた半球状の光のドーム。その光り輝く壁はよく見ると無数の言葉で埋め尽くされていた。
そのどれもが、相手を拒絶し存在を否定する言葉たち。その一文字一文字が光り、びっしりと半球状のドームの壁を埋め尽くしている。
そこへ大きく羽ばたいた炎のドラゴンが体当たりしてくる。
しかし簒奪された燃え盛る魂で出来た体は、ドーバーナの
何度も何度も繰り返し結界へと体当たりを仕掛ける炎のドラゴン。まるでそれは、仲間に入れて欲しがっているかのような必死さだ。生を渇望するアンデッドとしての本能なのかもしれない。
跪き、それを断固拒否するドーバーナ。そのドーベルマン的な整った顔はしかし、必死さが滲みでている。いつしか開いた口からはみ出した舌からは、大量のよだれが滴りおちていた。
幾度もの体当たりを繰り返したのち、炎のドラゴンがついに諦めた様子を見せる。
そのままドーバーナの結界を迂回した炎のドラゴンは、外の世界を目指して飛びさって行ったのだった。
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