第153話 案内人
二振りの七武器をゆらゆらと耳飾りとして揺らしながら、イサイサはスカベンジャースライムの巣へと来ていた。
目的は当然、偉大なるお方の御言葉を果たすため。
外の世界の案内人をお願いに、訪れていたのだ。
イサイサの知っている中で、外の世界の住人といえば、ここで働く異邦の探索者たちだけだった。
厨房勤務だったイサイサは、彼らと少しではあるが、接点があった。
四人の異邦の探索者のうち、ハラドバスチャンのスカベンジャースライムの巣に残っていたのは、一番の女性の探索者と、二番の男性の探索者だった。
「ほげっ? 1313ちゃん?」
その二人のうち、一番がイサイサをみて話しかけてくる。ちょうどスカベンジャースライムの間引きが終わった所なのだろう。ぷーんと独特の香りをまとっている。
そんな一番の少し変わった口癖は、前に呪いを受けたときの後遺症だと、本人からきいていた。
低位のレイスに呪われたらしい、その脆弱さに一部のダークコボルドは一番のことをひそかに蔑んでいたが、イサイサは全く気にしてはいなかった。
どちらかと言えば可愛らしい鳴き声だと親しみを感じているぐらいだった。
「一番さん、こんにちは。私ね、イサイサになったんだよ」
「え、イサイサちゃん? かわいい名前ね」
「乱子──その子、ネームド化したんじゃないのか?」
二番の男性が一番に告げる。
「そう。それに特殊個体にも。それで、外の世界へ行くんだけど、案内人を探しているの」
イサイサの言葉に、息を飲んだ様子で顔を見合わせる一番と二番。
二人が目線で話し合っているのがイサイサにも伝わってくる。
「イサイサちゃん──外の世界で何をするつもりなのか、お姉さんに教えてくれる?」
「私、偉大なるお方から使命を授かったの。それを果たしに」
再び顔を見合わせる一番と二番。二人が小声で交わす声はしかしイサイサの耳にしっかり届いていた。
「偉大なるお方ってことは……」
「ほげ、らぁ。良き隣人たれ、よ」
「ああ。だとすると……」
「ほげ。私がいくわ」
「わかった」
二人の間の話が終わったようだ。
一番が片ひざをついて、イサイサに視線を合わせてくる。
「イサイサちゃん。一番こと、この私、孔雀蛇乱子が案内人の役、引き受けるわ」
「ありがとう、乱子さん。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げるイサイサ。
その両耳のイヤリングが、大きく揺れたのだった。
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