第150話 覇道の始まり
「39番目の、ユニークスキルっ!?」
ゆうちゃんねるのライブ配信を見ていた緑川が叫びながら立ち上がる。
同じような驚きの声が、世界中の限定有料配信の閲覧者の中で同時に上がっていた。
「目黒っ! ユニークスキルの詳細、見えてるっ?」
「だめです! ユウト君がユシとして見ている画像の配信のせいか、イサイサさんのユニークスキル『
「もどかしいわね……。ユウト君が詳細を確認してくれるのを待つしか……あっ!」
ゆうちゃんねるのライブ配信の画面ではそんなユウトが同期しているユシがパクッとキングベヒーモスの角煮をつまみ食いしている。
それをどこか仕方なさそうに、たしなめる様子のイサイサ。
まるで本当の姉弟のやり取りのような微笑ましい映像だ。
ただ、それは一応ユウトのブラフだったようで、画面に映っていたメニュー画面に変化が現れる。
どうやらつまみ食いの隙にユウトはイサイサのユニークスキルの確認をしたようだった。
国有列車の中で格闘対戦ゲームをしたときも緑川は感じたことだったが、ユウトはゲーム中の目端はかなり利くという印象が、さらに強まる。
「嘘でしょ……。こんなユニークスキルが存在するなんて──」
そこで絶句する緑川。
不在のままの加藤と、緑川の三人の中で唯一ユニークスキルを持たない目黒が、その表示されたユニークスキルの内容を読み上げる。
「
ごくりと唾を飲み込む目黒。
「ユニークスキルの代償の肩代わり……。そしてユニークスキル使用者はイサイサを愛してしまう? ああ、何てこと。こんな魅力的な存在が配信で世界中に知られてしまったら」
「緑川先輩、このユウト君との会話の流れ、まずいですっ」
「えっ!」
ゆうちゃんねるのライブ配信の中で、ユウトたるユシが荷物を運びながらイサイサに問いかけていた。それはイサイサの夢を尋ねる会話。
迷った様子を見せたすえに、小声で外の世界を見てみたいと告げるイサイサ。
それに対して、ユシが応援する言葉をかける。
「え、あっ。ぁ、だめっ。ユウトくん、それはっ!!」
思わず画面にかぶりつくようにして上げた緑川の悲鳴は当然画面の向こうには届かない。
その画面の中に表示されたままのイサイサの詳細情報に、変化が現れる。
ユウトの肯定と応援の言葉に応じてMPが消費され、『特殊個体』の表示が、イサイサのステータスに追加される。
ダンジョン外への移動が可能となる、特殊固体かつ、ネームドとなったイサイサ。
混沌が今まさに解き放たれようとしていた。
この時より、少しドジで、可愛らしい白斑模様の黒柴コボルドの姿をした、愛が世界を侵食し始めることとなる。
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