第104話 列車の旅

「ついたねー。ユウト~」

「ああ。なんだか、あっという間だったな。もっと長く感じるかと思ったよ」

「ねえ! 列車の旅も楽しいね。ほとんどゲームばっかだったけど」


 俺と早川が列車から降りたあとから、緑川と目黒も続く。


「……ユウト君、格ゲー強いです」

「ええ。まさかここまで手強いとは。早川さんも、ね。二人にタッグを組まれると──」


 俺は早川たち三人と列車で首都まで来ていた。

 目的はもちろん、花鳥風月の勲章の授与式だ。


 ヨンナナスタンピードの影響で、各地で交通網にもダメージがあり、現在急ぎ復旧作業が進んでいるらしい現状。

 しかし、幸いなことに俺たちの乗った路線は通常運航していた。我が国を東西に貫く国有列車で、電気とダンジョン産の魔素結晶体のハイブリッド動力の列車なのだ、と早川が楽しげに教えてくれた。かなり高ランクのモンスターの魔素結晶体が使われているらしく、それを嫌ったモンスターが路線に手を出さなかったのだろうと。


 ──でも、良かったのかな。緑川さんたちから列車の券ももらっちゃって。結構な額なんじゃ……。席も、なんだか窓がなかったけど個室チックで豪華だったし。Wi-Fi完備だったし。


 俺はどんよりとした顔で後ろを歩く緑川たちを見る。

 列車のなかでは四人でスマホのゲームをしていた。目黒さんがゲーマーらしく、おすすめの対戦ゲームのアプリを、ブルートゥースで通信しながら遊んでいたのだ。

 はじめてやるものばかりだったが、さすがゲーマーと豪語する目黒さんのおすすめだけあって、どれも楽しくて、体感的には気がつけば目的についていたぐらいだ。


「それにしてもユウトはこの手のやつ、昔から習得早いよねー」

「そうかな。普通だと思うけど」


 なぜか後ろで緑川さんたちがふるふる首を横に振っているようだ。


「わぁっ! ここが首都かー! すごいーっ」


 列車が出発して居なくなったホーム。首都の街並みが俺たちの目に飛び込んでくる。足を止めて街並みを見る早川の後ろ姿を見たあとに、俺も景色に目を移す。


「うん、すごいなこれは」

「もう、ユウトはいつも、そんな感じだよね」

「そうか」

「そうだよー」


 楽しげに笑いながら振り向く早川。


「こほん。さ、あとでいくらでも見れるからユウト君も早川さんも、ね。ホームだと邪魔になるし」

「あ、すいません」

「ごめんなさい」

「いいのよ。さ、こっちが改札よ」


 緑川さんから軽く注意されてしまう。俺と早川は謝ると軽く顔を見合わせる。

 そしてどちらからともなく、アイコンタクトで笑ってしまう。怒られちゃったね、と。


 そうして、先導してくれる緑川さんたちについて、俺たちは首都へと足を踏み出したのだった。



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