第23話 サードアイ
「緑川先輩、ひどいです。急に押し付けるなんて!」
「目黒、急いで解析を。とくにそうめんは、のびてしまう前に」
ブーブーと文句を言い始める目黒に加藤先輩からの指示。
緑川と同じ探索者上がりである目黒も、スキル持ちだ。
そのスキルは、『
緑川のユニークスキルである『
目黒はブーブー言いながら廃屋に入っていく。解析用のノートPCと簡単なスキャナーやら検査キットを持ち込み済みなので、そちらへ行ったのだろう。
緑川はその間に、加藤へと質問する。
なぜ、そうめんから解析を指示したのか。そこにあるであろう、加藤先輩の深い思惑が残念ながら緑川には理解出来なかったからだ。
「加藤先輩、なぜそうめんから? どちらかといえば、英霊草の真贋では?」
「黒1ダンジョンだろ。あれは英霊草さ。それよりも──」
「それよりも?」
「せっかくのそうめんが、のびたら美味しくないだろ?」
緑川は思わずガックリとくる。
──そうだった。加藤先輩は見た目通り、食いしん坊だった。SNSのアカウントもそんな感じのふざけた名前のを使ってるんだった、この人。
「ただのそうめんだったら、もしかして食べる気ですか?」
「当たり前だろ。俺たちの最重要ミッションはなんだ? 良き隣人であることだろう。であればそうめんは食べて感謝を伝えるべきだ」
「──まあ、確かに。でも、ただのそうめんだったら、ですよ。いいですね」
「おーけーおーけー」
軽く論破されてしまう緑川。
そこへ目黒が戻ってくる。
「加藤先輩、緑川先輩。解析結果です」
簡易的なハンドプリンターで出力された紙を手渡してくる目黒。
加藤と緑川は頭を寄せ合うようにしてその紙を覗き込む。その勢いにじゃっかん引き気味の目黒。
「霊草と英霊草は間違いなし。最高品質──」
「そうめんとめんつゆは、一般的な店売りの品のまま、各種食器にも変なところはなし。だってさ、緑川」
にやっと笑って緑川を見る加藤。
その笑顔に、思わず加藤のすねを蹴る緑川。
しかし加藤はどこ吹く風とばかりに、水筒から器にめんつゆを注ぎ始める。
「さてさて」
「え、えーっ? 食べるんですかな!?」
うろたえる目黒。その手のお盆から、そうめんを箸で持ち上げると、器のめんつゆにつけてすする加藤。
「せめてなかに入ってからにしてください。加藤先輩。というか、我慢できないこどもかっ!」
本日二度目の緑川のすねキック。加藤の器のめんつゆが、振動でちゃぽんと揺れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます