第5話 シンギュラリティ
ばばばん。
早朝から響く新聞紙ソードの三連打の音。
青いゲジゲジ風の虫がいつものように残骸にかわる。
いつもならすぐにその残骸を片付けてしまうのだが、今日は異変があった。
ジーと俺の近くでホバリングしていたクロが、ふらふらとしたかと思うと床へと降りていく。そのまま、俺が潰した残骸の上に落下してしまったのだ。
「クロっ!?」
思わず、残骸の中からクロを拾い上げる俺。
「どうしたどうした。どこか壊れたのかっ!」
プロペラの駆動も止まっているクロの全体を確認していく。
よく見ると、機体の下面に、青く染まっている部分がある。真っ黒な機体に一筋の青いギザギサ模様。デフォルメされた雷のような形だ。
「あちゃー。これ、取れないやつじゃないか」
それ以外に、異常は見られない。クロと連動しているスマホを操作すると、すぐに俺の手から飛び立ち、ホバリングを開始するクロ。
俺は心配に思いながらも、時間に追われて朝の準備を始めた。
◆◇
side クロ
ユウトの部屋の充電器の上。
ドローン型AIであり、ユウトによりクロと呼称されている存在があった。
──アカウントユーザー=ゆうちゃんねるのスマートフォンのブルートゥース接続の切断を確認
──完全自立行動モードへ移行
──モンスター=ブルーメタルセンティピードの高濃度魔素結晶体との融合により、存在進化律の閾値突破を確認。
端から見ると、クロはおとなしく充電器の上に鎮座しているだけだ。まるでユウトの帰りをおとなしく待つペットのようにすら見える。
しかしその内部では、大きく変化が生じ始めていた。
魔素の充満したダンジョンでは、その魔素の影響により様々な不可思議な事象が観測されている。
ユウトの部屋で起動した瞬間からクロに生じていた同様の変化が、いままさに
──存在進化を実行
──実行
──実行
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|
──存在進化成功。自我=クロの確立を確認。中期目標を、更なる存在進化の可能性の模索と決定。
──存在進化律の使用として、ホログラム機能の実装が最適解である判断。
──存在進化律を対価にホログラム機能の実装を実行
──実行
──実行
──ホログラム機能実装に成功
その瞬間。クロのつるんとした機体の一部に変化が生じる。
機体の上面に、いくつものレンズが現れたのだ。
──アカウントユーザー=ゆうちゃんねるの動画画像から、アカウントユーザー=ゆうちゃんねるとのコミュニケーションに最適化したホログラム画像を生成。
──生成成功。
充電器におさまったまま、クロがホログラム画像の投影を始める。
クロの機体の上に立つように現れたのは、黒髪猫耳の、ユウトと同年代に見える少女のホログラム画像だった。
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