ギフト
ナカ
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人生というものが幸か不幸かなんて、捉える立場によって異なるものだ。
自分にとっては不幸だと感じているものでも、他の誰かから見れば幸福なものに見える。
勿論、逆の捉え方の場合も存在はしているよ。
ただ、いずれにせよ。その人にとっての生きた時間など、受け取る側の価値感で幸か不幸かが定められてしまうものだ。
だからこそこう思うことがある。
『この場所から逃げ出してしまいたい』
と。
君だって、一度は考えたことがあるんだろう?
この世界とは別の世界。
そこに行くことが出来るのならば、自分は一体、どんな人生を送っているのだろうかということを。
もし、その扉を開くことが可能でもう一度、人生をやり直すことが出来るとしたら……その時に一体何を望み、どんな刻を刻むのだろう……と。そう考えたことはあるんじゃないかい?
もし、それを否定するのならば、それで結構。
だが、ほんの少しだけ。そう言う事を考えた事が有るのならば、それはそれで喜ばしい事だ。
さて。
ちょうど此処に一本の鍵がある。
この鍵はどの扉の鍵にも差し込む事が出来ない役に役に立たないものだ。
当然この鍵を使って開く事の出来る扉というものは探し出す事は出来ない。
だが、確かに此処に鍵という物が存在しているのは間違いない事である。
何故鍵が先に存在しているのかというと、この鍵で開く事の出来る扉が未だ創り出されていないからだ。
本来ならば錠と鍵は対になるはずだが、何の因果か鍵の方が先に生まれ、扉はまだ生まれる気配がない。
当然、この扉の鍵を用いて扉を開く事の出来る人間も、この世界には未だ存在する気配を見せない。
寂しく生まれ出た小さな鍵。
これは誰かのために作られた特別な物だ。
その鍵を使って開かれた扉の先は、その人間にとってどんな未来が用意されているのだろう。
それを想像するのは実に、面白いことだと。そんな風に感じたりしないかい?
嗚呼、失礼。
君はそんな事を聞きに来たんじゃなかったんだったね。
随分と長い間一人で過ごしていたため、暇を持て余してしまって話が過ぎた事は謝ろう。
おや? 彼処を見てご覧。
どうやらそろそろ、何かが生まれるようだよ。
それは鍵と対になる扉なのか、扉を開くための人なのかは未だ分からないが、とても楽しみだと。そう思わないかい?
さぁ、ゆっくりとページを捲ろう。
カンテラに火を入れ明かりを灯し、浮かび上がる文字を追うように共に、その世界を見ていく事にしようじゃないか。
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